第42章 不信感
「ねえねえ、それよりさあ。もう一度、ちゃんとお話聞いてみようよ!今んとこ、昨夜澁谷先生と会えたり、会う約束をしていたのは・・・あの三人だけみたいだからさ」
コナンくんが空気を切り替えるように、視線を入口に立つ三人に向けながらそう話した。
「そ、そうね。まずは犯人探し。夏子をこの職員室で殴って気絶させ、公園に運んで突き落とした犯人を見つけなきゃ」
「ですね」
軽く相槌を打つ透さんに、心の中で安堵のため息をついて。
「じゃあ、僕にも聞かせてください。昨夜のことを、細大漏らさずにね」
・・・透さんの顔はすっかり探偵の顔をしている。
これは、事件が解決するまでここに居ろということなんだろうか。
いずれにせよ、今の私に拒否権もするつもりもない。
「ではまず体育教師の菅本さんから、もう一度昨夜の話を聞いても良いですか?」
高木さんが立っている三人の中からジャージ姿の男性に声を掛けた。
・・・あの人、教師だったんだ。
「さっきも言いましたけど・・・自分は本当に体育用具室で、用具の整理を夜の八時半過ぎまでやっていたんです」
右手でポケットからハンカチを取り出し、汗を拭きながら彼はそう答えた。
「もう夜遅いので一緒に帰ろうと思い、この職員室に澁谷先生を誘いに来たんですが、いらっしゃらなくて・・・」
「澁谷先生と一緒に帰る約束をしてたんですか?」
「あ、いえ・・・夜道を帰るのに男の自分がいた方が、心強いかと思って・・・」
・・・所謂、アリバイ確認というものか。
こういう現場に居合わせるのは初めてで、何処と無く落ち着かない。
それを落ち着けるかのように、自然と視線がコナンくんへと向けられて。
真剣にアリバイを話す彼の話を聞く彼の目は、やっぱりどう見てもただの小学生ではない。
落ち着くどころか、不安が増したようにも思えた。