第42章 不信感
「いつものように、近道の公園を通って帰宅するのを見届けようとしていたんですが・・・まさか公園の階段から転がり落ちてくるとは」
身辺警護・・・それも聞いていない。
そんな様子を、感じたことも無かった。
「た、確か通報では、誰かが突き落としたと言っていたはず・・・」
「見たのかね!?犯人を!」
「ええ、見ましたよ」
「・・・っ!」
透さんの目付きが変わって。
正確には安室透では無くなって。
・・・どちらかと言うと、バーボンに近い彼を感じた。
「階段に佇んで澁谷さんを見下ろしている、犯人のシルエットはね」
そう言いながら、職員室の出入口に立っている人達に目を向けて。
そういえば、そこに立つ彼らは明らかに警察官ではない。・・・言い方は良くないが、この事件の容疑者候補・・・だろうか。
「残念ながら、見たのは車の中からでしたし、すぐに走り去ってしまったので顔まではちょっと・・・」
「シルエットだけか・・・」
残念そうに警部さんがため息をついて。
何もかも聞いてない話ばかりが出てくる。
透さんが話し損ねていたとは考えにくい。意図的に隠してここへ連れてきたとしか思えなかった。
・・・でも、どうして。
「その後階段の上の方から車の発進音が聞こえたので、恐らく気絶した彼女を車に乗せ、公園内の階段の傍にある駐車スペースまで運び、人目がないのを確認して階段から突き落としたってところでしょうか」
その時の状況を思い出すように、手を顎に添えながら事細かに説明を続けた。
彼から新しい情報が出てくる度、どうして、で脳内が埋め尽くされていく。
もしかして、元々ここへ連れてくることだけが目的だったのだろうか。
・・・ただ、それでも理由は分からない。