第42章 不信感
可能性としては後者が高いと思えた。
透さんがFBIに正体がバレている以上、彼らに探りを入れられる駒は私が適任だ。
彼自身が、FBIにバレていると知っているかどうかは定かでは無いけど。
恐らく透さんは承認保護プログラムの話が出ているところまでは読んでいるはず。
あの時、私とジョディさんが会っているのを見ていたとすれば、その可能性は高い。
そして、それを私が断るということも・・・予想はしているはず。
考えたくは無いが、いつでも私を始末する準備は整っていて、その上で駒として使っているとしか思えなかった。
・・・自分でもそう思えるくらいには、冷静なのに。
それでも透さんの為に・・・彼の力になりたいと思っている私は、本当に愚かなんだろうな。
「アンドレ・キャメルです」
そう考え事を巡らせる中、目つきは鋭いまま、大柄なFBIの男性はそう名乗ってくれて。
もう一度改めて軽く頭を下げた。
「ところで、貴女どうしてここに?」
やっぱり気になることはそこか、と思いながら先程コナンくんに伝えたことと同じ内容を彼らにも話して。
「・・・どうやら今の私達はあまり話をしない方が良さそうね」
「私もそう思います」
それはお互いの為で。
知らなくて良いこともある。
今は知ってしまったが故に、困ることもある気がして。
「じゃあ何かね、澁谷夏子さんの一件を通報してきたのは君なのかね!?」
「ええ、彼女にはストーカーの調査と共に身辺警護も頼まれていましたので」
・・・え?
「・・・どうかした?」
透さんと話す警部さんの驚いた声と話す内容に、耳を疑った。
それに目を奪われ、硬直してしまった私を不思議に思ったのか、ジョディさんがすかさず問いかけた。
「あ、いえ・・・」
何も悟られないように、そう思いながら曖昧に返事をして。
確かに公園から突き落とされたことは聞いた。
だが、それを通報したのが透さんだと言うことは聞いていない。
・・・何故、隠していたんだろう。