第42章 不信感
「迷われましたか?」
「えっ・・・あ、はい・・・」
最後があんな別れ方だったからだろうか。
少し悲しげにも見えるその笑顔は、私の中にある僅かな不安を掻き立てた。
そんな笑顔は・・・見たくないのに。
「時間・・・大丈夫でした・・・?」
「大丈夫です。詳しいことは、行きながら話しましょう」
そう言って透さんが今来たであろう道を指差し、方向を示された。
彼の元へ駆け寄り、隣に並びながらその横道を進んで行った。
「・・・ところで、私は何をすれば・・・?」
少し歩いた後、様子を伺うように尋ねて。
「ただ僕と一緒に居てくれるだけで構いません。他に細かい指示があればその時にさせて頂きます」
彼と一緒にいるだけ・・・。
それは必要な役なんだろうか、と脳裏で考えながらも、彼の指示には出来る限り応えるつもりでいて。
「どうして・・・小学校に?」
「ストーカー被害で悩んでいた依頼人がこの小学校の先生をしていたんですが、昨夜事件に巻き込まれまして。その関係者として僕も呼ばれたんですよ」
納得できた部分はあるけど、新たに分からない部分も生まれて。
尚更自分が呼ばれた意味が分からない。
透さんのそうした目的は・・・何なのだろう。
「一応、関係者として貴女を連れて行きますので、この資料に目を通しておいて頂けますか」
そう言って渡されたのは、簡易的に纏められた依頼書で。
依頼人は澁谷夏子。
ストーカー被害に悩む小学校の先生。
一緒に渡された写真には綺麗な女性が写っていた。
その他、アメリカに留学していたことや経歴までも纏められていて。
相変わらず事細かく調べ上げられている。
・・・私や赤井秀一のように。
「まあ、依頼を受けてから調査はしていましたが、そこまで日は経っていない上にストーカーの目星はついていますので、資料はそれくらいしかありませんが」
確かに、透さんの依頼書にしては中身が少ない気がする。
特に違和感は感じなかったが、嫌な予感だけは消えることが無かった。