第41章 苦い罠※
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「ひなたさん」
「・・・っん・・・」
車内でいつの間にか眠っていたようで。
沖矢さんに工藤邸の前に着いたところで起こされた。
「起きられますか」
「・・・起きれないと言ったらどうなるんですか」
「僕が運んで差し上げます」
「起きます」
それだけは勘弁してほしいから、もう少し寝ていたい欲を我慢して体を起こした。
「・・・ありがとうございました」
そう言って掛けていた上着を彼に突き出して。
さっきまで留められていた熱が逃げるようで、どことなく肌寒さを感じた。
「どういたしまして」
いつもの笑顔でそれを受け取ったのを確認してから、車を降りた。
外の空気はツンと冷たく、温まっていた体はすぐにその熱を奪われてしまいそうだった。
足早に工藤邸に入ると、いつもの部屋のソファーへと腰掛ける。
話は帰ってからという彼の言葉からして、ここで待っていろという意味なんだと思って。
「紅茶でもご用意しましょうか」
数分後、沖矢さんが部屋に戻ってくるなりそう尋ねてきて。
「・・・結構です、早く話だけ済ませたいので」
「まあ、そう仰らずに」
そう言ってキッチンの方へと消えていった彼の背中を見て、結局用意するんじゃないか、と心の中で言い返した。
暫くしてようやく戻ってきた沖矢さんが、トレーに入れた紅茶セットを運んできて。
「では、話を始めましょうか」
紅茶をカップに注ぎながら、沖矢さんが改まったように告げて。
「・・・楠田陸道のこと、水無怜奈のこと・・・FBIの方から聞きました」
回りくどいことはもう言い。
言いたいこと、聞きたいことだけを話したい。
私の言葉を聞いた沖矢さんは少し動きを止めたようにも見えた。
「そのFBIの女性から、他に聞いたことは?」
・・・あれ、私・・・。
「・・・特には」
FBIの・・・ジョディさんの名前も、女性だなんてことも・・・一言も言ってない。
どうして女性だと、沖矢さんが知っているんだろう。
やっぱり、ジョディさんのこと・・・知っているのだろうか。