第41章 苦い罠※
「・・・中々、良い技をお持ちのようですね」
彼の言葉がどういう意味を指すのかはすぐに判断できなかったが、言い終わるなり服から手は抜いてくれて。
「んっ・・・う、んん・・・ッ!」
止めてくれたんだと思った瞬間、手が素早く頬に沿わされ、顔を少し持ち上げられると、唇同士が触れ合った。
その行動が一瞬すぎて、脳も体もついてはいってなくて。
「ふ・・・っんう・・・っ」
さっきは入ってこなかった舌が、苦しさで少し開いた唇の隙間から侵入してくる。
あの時のように噛んで抵抗することも考えたが、何故かそれができなかった。
罪悪感と言われればそうなのかもしれない。
けれど、それだけでは表せられない、複雑な感情がそれを止めた。
「ん・・・っ、ふ・・・んぅ・・・ッ」
口内で舌はクチュクチュと音を鳴らしながら絡み合って。
受け入れてしまっていることに気付いてはいた。
良しとはしていないが、拒み切ることもできない。
最低なこの行為を彼が聞いているとしたら・・・どこまで拾ったのだろうか。
「・・・ッ、おきやさ・・・」
「おや、もう呼んでくれないのですか」
その余裕そうな表情が悔しくてたまらない。
私ばかりいつも余裕が無くて。
沖矢さんの時も、透さんの時も。
意志とは逆に溢れて止まらない涙が、頬を伝ってはぽたぽたと落ちた。
「・・・最低、です・・・」
こんなやり方。
他に方法はいくらでもあるだろうに。
彼なら尚更、それを見つけ出すことは容易なはず。
どんな理由があっても、こんなやり方は理解できないし納得もできない。
ただただ、彼が憎くなり、透さんに会いにくくなるだけ。
誰も、得なんてしない。
目の前の彼以外は。
「そう思って頂いて構いません。今は彼を誘い出す餌が欲しいだけですから」
餌・・・?
もしかして・・・ここに・・・?