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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第41章 苦い罠※




「貴女が熱で弱っている時、一度呼んでくれたんですが・・・覚えていませんか?」

彼に言われて記憶を掘り起こすが、思い当たる節は出てこなくて。
熱があったせいか、あの時の記憶は殆ど無いに等しかった。

「・・・例えその時呼んでいたとしても、私は覚えていませんし、呼ぶつもりもありません」

あの時の恩は忘れてはいない。
でも、それとこれとは話が別で。

今ここでその恩を返すのでは割に合わない。
少なくとも私の中ではそうで。

「では、名前を呼んで頂けたらアレを片付けます」

そう言って視線を向けたのは盗聴器。

たかが名前を呼ぶくらい。
このまま沖矢さんに触れられるよりは何倍もマシだと思い、その名前を口にしようとした時。

「快楽に溺れる中、彼に聞こえるように・・・ですよ」

耳を疑った。
沖矢さんの趣味の悪さは把握していたつもりだけど、ここまでくると最早呆れすら出てくる。

「・・・嫌です。目的も分からないのに、そんなことはできませ・・・っん・・・!」

沖矢さんを睨み付けながら嫌悪感丸出しでそう告げる最中、止められていた愛撫が再開されて。

「沖矢・・・さ・・・ッ!」
「昴、です」

単調に返されたそれに怒りは大きくなった。

沖矢さんも、コナンくんも、そして兄も・・・彼らは自分達のことも考えも教えてはくれなくて。
それは透さんにも言えることだけれど。

いつも私は蚊帳の外で、肝心なことは何も知らない。

都合良く、使われるだけ。

透さんはともかく、沖矢さんにそうされるのはとても悔しいのに、その悔しさのやりどころが無くて。

「・・・っ、・・・」

泣きたくなんてないのに。

勝手に涙が溢れた。

「それ程までに嫌ですか」

私の涙を指で拭いながらそう問われて。

そうでは無いけど、その意味は含まれているかもしれない。

彼は嫌いだが・・・そうはなりきらない。

自分の中の曖昧な気持ちが、苦しさを増幅させる。

「・・・すばる、さ・・・ッ・・・」

助けを乞うように、彼の名前を呼んで。

もう、何も知らないことは・・・嫌だ。



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