第41章 苦い罠※
「・・・っん・・・ぁ・・・!」
「恐らくこの盗聴器越しに貴女の声を聞いているのはあの彼ですよ」
だから声を聞かせろと?
だったら尚更理解できない。
そもそも、この盗聴器は車内にあった。
それを透さんが取り付けられるはずがない。
だって彼は沖矢さんが来るずっと前に・・・。
私、と・・・会って・・・。
「・・・っ、もしかして沖矢さん・・・私の後、つけてました・・・?」
上がり始めた息の中、言葉をなるべく小声で必死に吐き出して。
私の問いに沖矢さんは不気味な笑顔のまま鼻で笑い、そっとメガネを押し上げた。
「残念ながら、貴女の推理は間違っているでしょうね。米花百貨店にいたことは電話で始めて知りましたし、そもそもあの盗聴器を仕掛けたのは彼じゃない」
私のたった一つの問いで、巡らせていた考え全てが彼に伝わってしまって。
こういうところは探偵らしさを感じるが、他の言動が彼の探偵らしさも院生という立場も疑問に思わせてしまっていた。
「・・・じゃあ、あれは誰、が・・・っん、や・・・!」
言葉は無理矢理押し込められて。
彼が胸の蕾を刺激する度、体はピクッと反応を見せ、小さく声が漏れて。
もどかしいそれが苛立ちも欲望も掻き立てられた。
「んん・・・っや、ぁあ・・・ッ!」
首筋に舌を這わされ、ゾクゾクとした感覚が全身を駆け巡って。
鼓動が早まり、息が上がり、体が自然と動く。
彼の目的は分からないまま、愛撫は続けられて。
「おきや・・・さ・・・ッ!」
何度目かの名前を呼んでみるが、それはなんの意味も持たず。
彼の服をギュッと掴み、ただただ今の状況を耐えた。
「昴、と呼んでも構いませんよ。あの時のように」
・・・あの時?
私は彼を名前で呼んだ覚えなんて無い。
そんなこと、するはずも無いし。
「その様子だと、覚えていらっしゃらないようですね」
彼の言葉と笑顔で、妙な胸騒ぎが起きて。
・・・本当に、彼の名前を呼んだことがあるような気さえしてきた。