第40章 敵味方※
「なるべく、声は大きめでお願いします」
質問の答えになっていないそれを耳元で囁かれると、何故そんなお願いが出てくるのか考える暇も与えられないまま、耳を下から上へと舐め上げられた。
「ひぁ・・・ッ!」
思わず漏れた甘い声は車内に響き、一気に恥ずかしさが込み上げた。
「な、に・・・っんぅ・・・!」
言葉を発する隙は無いまま、その唇は彼によって塞がれて。
舌は入れず、ただ本当に塞ぐだけ。
心は彼を拒んでいるのに、体が彼を受け入れている。
この最低な矛盾に、脳内は悔しさでいっぱいになった。
本当に言葉が出るのを防ぐだけのキスはすぐに離されて。
「・・・ッ、おきやさ・・・っ・・・!」
服の隙間から沖矢さんの手が滑り込んでくる。
車どころか人も来ないような廃墟だとは言え、あくまでもここは外で。
「待っ・・・沖矢さん・・・!」
制止を求める言葉も、服の中に滑り込んでこようとする手を抑える力も、彼の前では全て無力だった。
呆気なくその手は背中に周り、片手でブラのホックを外された。
「沖矢さん・・・ッ!」
何が何だか分からない。
何度も名前を呼ぶが聞き入れてはくれず。
恐らく盗聴器を仕掛けた相手に声を聞かせろという事なんだろうが・・・それは透さんでない可能性が高い。
それとも、透さんだと確信してこんな事をしているのか。
もしくは、透さんじゃないと分かっていての行動か。
いずれにせよ、目的は理解できなかった。
「今は余計なことを喋らず、鳴いて頂けますか」
なんて配慮のない言葉、と心の中で毒づいて。
本当は貴方にこうやって触れられることすら嫌なのに。
「・・・っや・・・!」
少しキツめに摘み上げられた蕾から、電気のような刺激が走った。
透さんとは違う、少し乱暴にも感じるその仕草に反応してしまう自分も、嫌いだ。