第40章 敵味方※
見つけた盗聴器を軽くハンカチで包むと、何故かそれをダッシュボードへと置いた。
「・・・沖矢さん・・・」
囁くように、彼へ耳打ちして。
彼は何も言わず、顔だけをこちらに向け「何か?」と言いたげな表情で返された。
どうせこちらの言いたいことは分かっているくせに。
「・・・壊さないんですか?」
声を拾われないよう、最低限の声で。
「ここでは何ですから・・・この先で壊すとしましょうか」
わざわざそうする理由が分からなかったが、彼のことだから何か考えがあるんだろうと思った。
彼が返答した後、車は地下駐車場から出されて家とは反対の方向へと走り出した。
道中は勿論無言で。
その間、気まずさだけが募っていった。
「・・・?」
暫く車を走らせた後に停車した先は、廃れ切った廃墟。
建物の様子を見る限り、何年も放置されているようだった。その敷地内の端の方へ車は止められて。
無言で沖矢さんに視線だけで尋ねると、それに気付いた彼にはただ笑顔を返されただけで。
その笑みは、何かよからぬ事を考えているようにも見えて。
不幸にもその予想は的中してしまった。
「・・・っ、沖矢さ・・・!?」
徐ろにシートベルトを外した沖矢さんが、助手席側に覆い被さるように手をついてきて。
この閉鎖空間では逃げることもできない。そして、沖矢さんの車は普通の車とは逆開きタイプの車で。これが逃げにくさを増していた。
しかも、沖矢さんが盗聴器を壊していないせいで、声も上げられなくて。さっきの声も咄嗟に出たものだったが、声の大きさには何とかブレーキがかかった。
「何のつもりですか」
それは色々なものに対して尋ねたもので。
彼が正直に教えてくれるとは思わなかったが、今このどこか危険な状況をどうするか、少しでも考えられることかもしれないと思った。