第40章 敵味方※
「貴方もいらしたんですね」
沖矢さんがゆっくりと止めていた足を再び動かし始めて。
こういう時に感じる彼への頼りや期待が、彼を嫌いになり切れない理由なのかもしれない。
「僕はたまたまここで会っただけですよ。貴方に迎えを頼む直前にここで居合わせたので、代わりに僕が送ると貴方へ伝えようとしたんですが・・・何故かもういらしたみたいで」
それは・・・。
「も、もう沖矢さんには連絡していたんです・・・っ」
なるべく今は彼らが会話をしないように急いで口を挟んで。
とにかく、この場を早く離れたい一心だった。
「ではこの番号はどなたのでしょうか?」
そう言ってスマホの画面を向けられて。
思わずそれからは目を逸らした。
「遅かったので・・・催促の電話を・・・」
適当な言い訳を作って吐き出している最中、透さんはスマホを操作し始めた。
何かを見つけられたのか、柔らかく浮かべていた笑みは段々と黒く深いものになっていって。
「しかし、前回掛けられているのは十五分前のようですが。そんなにせっかちなお人だったとは・・・初耳ですね」
完全に油断していた。
発信履歴を削除しておくことは脳裏にあったのに、すっかりそれを忘れてしまっていて。
助けを求めるように沖矢さんへ視線を向けるが、それを見た彼はただニヤリと不敵に笑うだけだった。
「何か・・・怯えていたように見えたのですが?」
そう言いながらこちらに向かって歩いてくる透さんに合わせて後退りをした。
厳密に言えば透さんじゃないから・・・後退りをしたとも言える。
「それ・・・は・・・」
もしかして・・・あの視線はバーボンのもの・・・?
ということはここまで彼に付けられていたのだろうか。
ジョディさんとの会話を・・・聞かれた?
・・・いや、私達がいたカフェに客は殆どいなかった。
それに女性ばかり。
例え透さんが怪盗キッドの様に変装をしていたとしても、あそこにいることは不可能だ。
でも、ただつけてきただけならその理由は益々分からないものとなっていって。