第40章 敵味方※
「ひなたさんは?」
もう一度そう尋ねられて。
どうしよう、この間のFBIの人と会ってました、なんて言える訳もない。
「ちょ・・・ちょっと気分転換に・・・」
そう言っている最中にも、一歩一歩確実に透さんは近付いてきていて。
その圧へ押されるように、自然と足が後ろへ進んだ。
「駐車場にいるということは、誰かのお迎え付きですか」
逃れようもない。
恐らく私が免許は持っているが、車は持っていないことを彼は知っている。
「・・・お、沖矢さん・・・に・・・」
今朝、あんな事があったばかりなのに。
こんな時にも彼の名前を出さなきゃいけないなんて。
「そうですか。では、代わりに僕が送りましょうか?今から彼に電話をする所だったのでしょう?」
心臓が一度大きく跳ねた後、自身の手に持つスマホに目をやった。
やばい、今ここには沖矢さんの番号が入ってる。
そう思ってその画面を閉じようとした瞬間。
「・・・ッ!」
素早く透さんに手首を捕まれ、それを阻止された。
そのまま彼にスマホの画面へ視線を向けられ、沖矢さんの番号を彼に晒してしまって。
汗が頬を伝う感覚が、妙に生々しく感じた。
「少しお借りしますよ」
そう言ってスマホを取り上げられて。
借りるも何もそれは透さんの物だけど、と心の中で思いながら、ただただ彼を見つめる他なかった。
「・・・!」
彼が発信ボタンに手を掛けようとしたその時、何処からかこちらに向かってくる足音が聞こえてきて。
その音がする方向へ、私も透さんも視線を向けた。
「こんな所に居たんですか。探しましたよ」
そう言いながら、車の影から姿を見せたのは沖矢さんで。
どうしてこうも鉢合わせたくない二人が何度も会ってしまうのだろうか。それもよりによって同じ日に。
「ホォー、もうお迎えは呼ばれていたんですか」
何かを見透かすようなその目は、やはり透さんの物ではない。
獲物を捕らえる獣のようなそれに、体は小刻みに震え、動かなくなっていた。