第39章 追求心
「写真の彼が赤井秀一さんだということは分かりました。でも、写真は本当に偶然で・・・」
あくまでも私が単独で動いていて、それを透さんに盗聴されていたことにした。
察しの良いコナンくんは気付いているかもしれないが、私の計画だと言い張れば良い。
透さんも、きっと彼に聞かれてもとぼけるだろうし。
「まさか知り合い・・・それもFBIの方だとは思いませんでしたけど」
嘘をつくのにも慣れてしまった。
透さん以外の人間なら、最早罪悪感すら薄くて。
「・・・貴女、どうしてシュウのことを調べているの?」
調べているとは言っていないけど。
この流れから察するに、そういう考えにはなるか・・・と感じて。
ミステリートレインで見た男が彼そっくりで、まだ生きていると考えているから。そして、透さんが彼についてまだ調べているから。
・・・なんて口が裂けても言えないが。
「単純に、彼が本当に死んでいるのか気になったんです。街で見掛けたことがあるって言いましたよね・・・?」
本当は見掛けたことなんてない。
それどころか、それは透さんの変装だったことも知っている。
コナンくんと連絡を取り合っているのを見るあたり、恐らく彼女もその事には気付いているはず。
「・・・残念だけど、それは恐らくバーボンの変装よ」
やっぱり気付いている。
「そう・・・ですよね」
私が関わりを持っているのは安室透だけ。
バーボンとは何の関わりもない。
それは事実ではあるけど、時々言い聞かせていないと不安になることでもあった。
「貴女、あれがバーボンの変装だって知ってたの?」
「あっ、いえ・・・それもベルツリー急行でバーボンの口から聞いたんですが・・・街で見掛けた時はまだ赤井さんの顔を知らなくて。火傷だけが印象強く残っていたので覚えていたんです」
本当はその姿を知らない。
私が知っている赤井秀一は、透さんの事務所にあった写真とミステリートレインで会った時のあの姿だけ。
ミステリートレインでの彼がそうと決まった訳ではないが、何故かあの時感じたままの妙な確信だけはあった。