第39章 追求心
「す、すみません・・・そうではないんですけど・・・」
「あ・・・ごめんなさいね、私ったら・・・」
笑って誤魔化すように彼女は体勢を元に戻した。
何だか車内での流れが逆転したようでちょっと違和感を感じた。
それにしても、赤井秀一は死んでいるはずなのに、どうして会ったかどうかをそんなに気にするのだろう。
透さんがまだ変装して彼女らの周りを彷徨いているのだろうか。それともやっぱり、彼はまだ・・・。
「あの、写真の彼・・・赤井秀一さんは生きているんですか?」
「貴女、シュウのこと知ってるの?」
少し驚いた様子で親しげにシュウと呼ぶ彼女に、彼らの関係性がどこか見えた気がした。
同じFBIの人間だけでは無いような、関係が。
「・・・ベルツリー急行で、バーボンから諸星大という名前を耳にして。気になって透さんの事務所にあった資料から、本名やFBIにいたこと、組織に潜入していたことを知りました」
沖矢さんにはこれらを知っていることはバレているんだし、彼女に明かしても問題はないと判断した。
何なら、あの時一緒に居合わせた沖矢さん達の仲間だという男とも話を聞いているんだし。
・・・彼が赤井秀一であれば話は別だけど。
「・・・なるほどね。でも、生きているのか・・・と聞くってことは、シュウが焼かれたあの事件のことも知ってるみたいね」
「来葉峠の・・・ですね」
そう、彼はそこで焼かれたはず。
「知っているかもしれないけど、そこで焼け残った彼の右手と、生前残した指紋が一致したの。しかもそれを調べたのは日本の警察。彼の死は・・・信じたくないけど事実よ」
彼女の話し方からして、嘘をついている様子はない。だとしたら、あまり信じられないが本当に彼はもうこの世にいないということなのか・・・。
「そうですか・・・」
「・・・もしかして私がFBIで、写真の彼はシュウだと知っていてあの写真を私に渡したの?」
その通りではある。
けど、これをFBIに伝えると、透さんにとって不利になるかもしれない。
私はあくまでも透さんを優先していたい。
彼女が私との出会いをどれくらいまでコナンくんに話しているのかは分からないが、彼女にそう聞かれるということは、少なからずコナンくんがあの時透さんに盗聴されていることを、彼女に伝えていないと考えた。