第4章 気持ち
「へえー、意外ですね。ひなたさんがそういう物に興味があるなんて」
「そ、そうですか?」
趣味のことはいつか話そうと思っていたが、今はその時でない気がした。コナンくんにバッジを返し、モーニングの準備を進める安室さんの手伝いをしにカウンターへ戻る。
「お待たせしました」
あっという間に出来上がったモーニングセット。
そういえばコナンくんが注文した様子はなかったけど。いつもこの時間にくればモーニングなんだろうか、と思いながら彼の元へ飲み物を運んだ。
「ありがとう、いただきます」
コナンくんが食べ始める頃にはもう開店時間で。扉にかかっている札をCLOSEからOPENに変えた。
次第にお客さんも増えて、モーニングを食べ終えたコナンくんも席を立った。
会計をして見送ろうとしたとき、彼に手招きされた。目線が合うように、しゃがみこむ。
「如月さん、最近変わったこととかない?」
「変わったこと?」
特に思い当たることはなかった。ここ1ヶ月は事務所かポアロで仕事をするか、たまにペット探しに出かけているか。
「うーん、特にはないと思うけど・・・どうして?」
「いや、ないならいいんだ」
そういうとコナンくんは手帳を取り出し、何かを書いてそのページを破った。
「これ、僕の連絡先。身の回りで何か変わったことがあったら教えてくれない?何でもいいから」
「え?う、うん。分かった」
どういうこと?
どうしてコナンくんがそんなことを?
どうして私に?
色々疑問は出てくるが、何かがそれを許さなくて結局聞けなかった。
「博士のことは聞いておくから。また伝えるね」
「うん、ありがとう。気を付けてね」
「如月さんもね」
最後に意味深な言葉を残してコナンくんは帰った。
なんだったんだろう・・・と思いながら貰ったメモをそっと開く。
『安室さんについて調べてる。協力して』
連絡先と共に書いてあるその言葉に胸騒ぎを覚えた。
どうして安室さんのことをコナンくんが・・・?
「ひなたさん?」
中々レジから戻らないからか、安室さんから声をかけられる。その言葉で我に返り、メモをポケットに仕舞った。
「すみません!すぐ戻ります!」
今は仕事に集中しよう。
さっきまでのことは無かったことにするように、常に手を動かし続けた。