第39章 追求心
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あの後、トースターからパンが焼ける音が響いたのを合図に沖矢さんは別の部屋に移動してしまって。
一人沖矢さんの言葉を脳内でぐるぐるとさせながら味の感じられない食事を済ませ、ゲストルームへと戻った。
「・・・・・・・・・」
元々することのない日々なのに、透さんと別れた後は更に何かをする意欲を削がれてしまう。
ただ、今真っ先にすべきことはあって。
早く引越し先を探すこと。
ただ、透さんから提案されたあの事を沖矢さんに相談するかどうかはまだ迷っていた。
「・・・・・・!」
そういえば、と思い出して鞄の中を漁った。
目当ての物を引っ張り出すと改めてそれを見つめて。
「ジョディ・・・スターリング・・・」
彼女の名刺を手に、名前を呟いた。
ジョディさんには、個人的に聞いておきたいことが幾つかあって。
それは勿論、赤井秀一に関することだった。
透さんが調べている彼については、もう少し知っておく必要があると判断して。
コナンくんと知り合いということは、彼との関係を話せば小さくても何か情報を得られるかもしれないと思った。
そう思うと、今すぐにでも彼女に会って話を聞きたくて。
気付いたらスマホを手に取っていた。
何度も電話番号を確認し、深呼吸を数度してから発信ボタンを押した。
数回のコール音の後、その電話は受けられて。
『はい』
電話から聞こえる女性の声に、一度落ち着けた緊張感が高まった。
「あ・・・すみません、ジョディ・スターリングさん・・・ですか?」
『そうですけど・・・どちら様ですか?』
そうだ、名乗っていなかったと少し慌てつつも、冷静さはまだ保っていて。
「以前、並木道で貴女の知り合いという男性の写真を拾ったものです。えっと・・・コナンくんの知り合いの・・・」
よくよく思い返せば、彼女には名前を言っていなかった。正直、あの時はそれどころではなかったし。
彼の名前を出せば思い出してくれるかと思い、弱々しく付け足してみた。