第39章 追求心
「人に好意を持つことへ理由が必要だとは思えませんが、敢えて言わせて頂くなら・・・」
少し考える素振りを見せた後、こちらに体を向けて笑いかけられて。
「彼への一途な姿に惹かれた、といったところでしょうか」
正直、その答えに理解はできなくて。
それが理由だとしたら、本来であれば諦めるところではないのか、と。
「・・・沖矢さんは、私と透さんを・・・離したいんですか」
それは以前、突然押し掛けてきた沖矢さんにも言った台詞。
厳密にはあれは沖矢さんでは無く、恐らく透さんだと思うが。
今思えば、あの時の返事が透さんの言葉なら・・・曖昧なあの答えも何となく理解ができる気がした。
「僕と貴女は協力者です」
答えになっていないその返事に、いつもの沖矢さんらしさを感じて。
「いつでも利用し合える関係の、延長線上の関係と思って頂いても構いません」
・・・それってつまり。
「所謂、体だけの関係ってことですか」
その関係を、彼と持ったことはないけど。
これから持つ予定も無いが。
「貴女と彼も、似たような関係ですよね?」
それについては言い返せなくて。
私はそうは思っていないけれど、さっき沖矢さんに、付き合ってはいないと目の前で言われたにも関わらず、透さんはそこには触れなくて。
奪い取る・・・という言葉は使ったけれど、それは恋人をとは言っていないし。
「僕も、寂しい時はお相手しますよ」
いつの間にか沖矢さんが隣に立っていて。
僕も、なんて使って欲しくない。
ただ、靡くことはない、流されることはない、そう思っていたけれど。いつか彼とそういう関係を持ってしまうんじゃないかという不安が溢れた。
「・・・生憎ですが、間に合ってます」
今は。
心の中でそんな言葉が付け足された。
沖矢さんが嫌いな訳では無い。
ただ、彼にはそういう関係のないただの協力者でいてほしい。
今、そう思っているのは私だけかもしれないが。