第39章 追求心
「・・・・・・はぁぁ・・・」
大きなため息をついて、ベッドのフレームへと背中を預けた。
透さんと沖矢さん同士の会話には全神経が削がれる。
体力や精神の他にも、色々無くなっている気がする。
別に仲良く馴れ合ってほしい訳ではない。
ただ、お互い大人な態度を取っていてほしいだけ。
普段は冷静沈着といった感じの二人なのに、顔を合わせるとどこか子供っぽくなるような気がして。
特に、沖矢さんが透さんの怒りを逆撫でる天才だから。彼にはもう少し大人しくしていてほしいと思っていた。
私が指示できる立場ではないけれど。
だからこそ、この思いは一層強くて。
「・・・お腹、空いたかも」
そういえば朝ごはんは透さんのコーヒーと共に食べそびれている。今、沖矢さんと顔は合わせにくいけれど、空腹には勝てなくて。
仕方なく、もう一度ため息を吐きながら部屋を後にした。
ーーー
「おや、朝はまだだったんですか」
台所へ向かうと、沖矢さんがスマホを触りながらコーヒーを飲んでいて。
私がここへ姿を見せるときはそういう時だけ、ということを分かっているのが少しだけ腹立たしくも思って。
そういうことを知っていてほしいのは彼じゃないのに。
「透さんに用事ができて食べそびれたので」
沖矢さんの問いかけに答えながら自分の分のコーヒーを注いで。軽くパンで済ませてしまおうと一枚取りトースターへ入れ込んだ。
彼とは少し距離を離して椅子へ腰掛けると、途端に強い視線を感じて。
「・・・なんですか?」
その視線の主に目を向けながら問い掛けた。
「美しい女性を見つめるのに、理由は必要ですか?」
透さんのように、言われたこちらの方が恥ずかしくなるようなセリフを吐かれて。
本当にどういうところでそんなことを覚えてくるんだろうか。
「沖矢さんって・・・私の何が良いんですか」
常々気になることを、思い切って尋ねた。
彼に気に入られるようなことをした覚えはないし、そういうタイプでもないと思っているから。