第38章 独占欲
「では、手っ取り早く伺います。情報を共有頂けますか」
言われてみれば、そんな約束を交わしたような気もするが、私が思い出したその約束は少し言葉が付け足されていた気がして。
「あの時沖矢さん、なるべく・・・と、言いませんでした?」
そこに義務はないはず、という意味で言い返して。
「おや、そうでしたかね」
惚けた様子でそう返されれば、忘れていたことに託けて私が口を滑らせるのを期待した・・・というところだろうか。
残念ながら彼から情報を貰っても、漏らすつもりは一切無くて。
私は・・・透さんの味方でもあるから。
「残念ですけど、私の口から報告できるようなことはありません」
キッパリと言い切れば沖矢さんもどこか諦めたような雰囲気を見せて。
「頑固な性格はよく分かっていますので、今回は聞きませんが・・・貴女がその気ならこちらも配慮は無く動きますよ」
顔を目の前にして言われれば、僅かな恐怖が湧いてくるようだった。
元々、私に配慮した動きなんて感じたことはないけど。
「・・・どうぞ」
必要最低限の返事で応えて。
私も彼に配慮して動いたつもりは無い。
全てはコナンくんがいたからだ。
彼には迷惑を掛けてはいけないはずだと言い聞かせた。
「また、彼に会うときは必ず一言伝えてください」
近付けていた顔を元に戻し、ポケットに手を入れたままそう言われて。
本当は言いたくはなかったが、勝手に動いて迷惑が掛かるのも嫌だから。
「・・・分かりました」
少しふてぶてしく返せば、また笑われたように沖矢さんが息を漏らした。
背中を向けて扉へ向かって歩き、ドアノブに手をかけながらこちらを振り返られて。
「約束、ですよ」
そう言い残してから彼は部屋を後にした。
言い聞かせるように、刷り込むように。
優しい言い方だけど、どこか黒さを含んだ物言いにゾクッとした何かが背筋を駆け抜けた。