第38章 独占欲
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「・・・っ、ん・・・」
ふと目を覚まし、小さく瞼を上げる。
あれから・・・どうしたんだっけ。
確か、事を終えた後・・・重たい体に鞭を打ち、シャワーを浴びて。
・・・布団に入ったことまでは覚えている。
あの時透さんに何か言われたけれど、睡魔が限界に達していた為、まともな返事はできなくて。
「・・・ッ・・・!」
段々と頭も目を覚ましてきた所で瞼を完全に起こして顔を上げた途端、目に飛び込んできたのは近過ぎる透さんの寝顔だった。
「・・・とおる・・・さん・・・?」
囁くように、か細い声で彼の名前を呼ぶ。
返事が無い辺り、本当に寝ているようで。
相変わらず整った顔立ち、意外と長いまつ毛・・・そして私が枕にしていたのは、透さんの腕で。
「・・・っ」
色んなことに気付いた瞬間、恥ずかしさがどこからともなく込み上げてきて、透さんの顔から視線を逸らした。
透さんの寝息が聞こえてくるようで、鼓動がどんどんと早くなる。
そんな時にふと視界に入ったのは、透さんの首筋に付けられた薄い跡。
それを付けたのは紛れもなく自分なのだけど。
「・・・薄い・・・なぁ・・・」
今にも消えてしまいそうなそれにどこか不安を感じて。
そっとその跡に手を伸ばした。
・・・最近の彼の行動には、理解し得ない事がいくつもある。
それでも、彼からの愛はどうにも偽りのようには感じなくて。それもまた演技のうちなのであれば、これ以上凄いことはないと思うが。
「・・・・・・・・・」
ゆっくり彼を起こさないように体を起こし、薄い跡の残る首筋に唇を近付けた。
「・・・ん・・・」
その上からもう一度吸い付き、なるべく濃く残るように強く吸い上げた。
「っは・・・、・・・・・・!」
きっとこれで残ったはず、と唇を離し体を起こそうとしたところ、透さんの腕が急に伸びてきて私を引き寄せた。