第35章 正して※
「まだヘタってもらっては困ります」
そう言いながら腰に当てる手に力が入ったのが分かった。
もしかして、なんて思った時にはもう遅くて。
再び下から彼に突き上げられると、さっきとは全く度合いの違う快楽が襲ってきた。
「だめ・・・ッ、も・・・!!」
さっきイったばかりなのに。
今日は私に動いて欲しいと言ったのに。
そんな小さな文句ばかり脳内には並べられて。
それでも問答無用で突き上げてくる腰に、ただただ甘い声を漏らして喘いだ。
「や、イっちゃ・・・あ・・・ッ!!」
また呆気なくその時は来て。
「い、ぁ・・・ン、ああぁぁ・・・っ!!」
二度目の絶頂。
もうここまでくれば理性なんて欠けらも無い。
既に無くしてしまっていたかもしれないけれど。
酷い倦怠感に襲われ、彼の体に手を付くことも出来ず、そのまま透さんの上に倒れ込んだ。
「・・・すみません、無理をさせました」
回転の鈍くなった脳のまま、透さんの言葉を何とか拾った。
心臓は早く大きく脈を打ち、息はこの上なく荒れていて。
このまま寝てしまえれば気持ちが良いんだろうな、なんて思って。
でも、まだそうすることはできない。
「・・・透さん、まだ・・・」
まだ、彼は迎えていない。
結局、気持ち良くなっているのは私だけ。
そんなのは嫌で。
「もう辛いでしょうから、一度寝てしまっても構いませんよ」
そっか、まだ夕方頃か。
何となく部屋が薄暗くなっているのを感じれば、日が落ちかけていることを感じて。
「・・・でも」
「今日は僕と居てくれるんですよね」
優しく頭を撫でられれば、とても心地好くて。
ダメだと脳では指示を出しているのに、重くなった瞼は言うことを聞かなかった。
「それだけで十分です」
嘘つき。
本当は透さんだって辛いくせに。
言いたくても、もう声を出す気力さえ残っていない。
「おやすみなさい」
頭に優しくキスをされて。
この上なく幸せな気分のまま、彼の上で眠りについた。