第35章 正して※
「と、るさ・・・!」
耳元でクチュクチュと音を立てられれば、私の中の醜い欲求が悲鳴を上げた。
たまにかかる彼の吐息さえも快楽に変わっていって。
「や・・・っ、ぁあ・・・!」
触れて欲しい。
何度も焦らされ続けた体はもう限界で。
「それで・・・約束というのは?」
「・・・っ」
耳元へ低い声でそう囁かれる言葉は、聞きたくない質問だけれど。それすらも刺激に変わる今は、そんなものまで無意識に体が求めていて。
「帰る前に・・・連絡を入れる、こと・・・です」
苦し紛れに出た答え。
透さんがこれで納得してくれるとは思えなかったが、私の中でそれ以上の答えは見つけ出すことができなくて。
「もう一つは?」
・・・それは本当の答えも私には思い出せなくて。
彼との言葉は話半分だったから。
「・・・すみません、実は思い出せなくて。沖矢さんの話はあまり聞いてないので・・・」
ここは正直に話す以外できなくて。
透さんが信じてくれるかどうかはさておき。
「こういうことを・・・要求されたのではないですか?」
そう言いながら、透さんの手はゆっくりと腹部から肌を滑ってくる。
やっぱり、信じてくれそうもない。
思わず服の上から彼の手を掴むが、何の負荷にもなるはずがなくて。
「ち、が・・・っ」
彼からそういうことを要求されたことはない。
無理矢理・・・というより突然キスをされることは度々あったけれど。
彼がキスするときや体に触れてきたときも、許可を取る事は無くて。
ましてやそんな約束なんて。
「あの男と同じ家に居て、何も無かったのは少し信じられませんが」
何も無かった、と言えば確かに少し語弊がある。
キス以上のことは少しだけどあったことに変わりはないから。
「キス以上は・・・ありません・・・」
改めて嘘を固めた。
これがもし嘘だとバレたら。
彼は私をどう思って、どんな表情をするのだろう。
その時彼はもう、私の傍にはいないかもしれない。
「見返りを求められたこともありませんか」
透さんからの質問は続いて。
そんなことは無かったと思うが・・・と少し考え込んで、思い当たる出来事を一つだけ思い出した。