第34章 言の葉
「・・・っんん、う・・・!」
透さんの唇が何度も落とされた腹部を、這うように手が伸びてきて。
下着の隙間をすり抜けるように、長い指が胸の膨らみに沿わされた。
「っは、ぁ・・・透さ・・・っ」
唇を離された瞬間、下着ごと服をたくし上げられて。
何度脱がされても、羞恥心の大きさは変わらなかった。
「・・・殆ど消えてしまいましたね」
胸の辺りを触るその手にも、覚えがある気がした。
優しく、愛おしいものを触れるようなその手付き。
あの時、沖矢さんのフリをした人物にもそうされた。
「もう一度・・・つけて、くれますか」
そう彼に頼んで。
やっぱりあの時の彼は・・・透さんだ。
その時にほぼ確信した。
でもまだ確証がない。
それに、まだ何故そうしたか理由が分からない。
今はこれが真実であることを祈るだけだった。
「勿論」
少し悪戯な笑顔を見せては、透さんの唇が胸の膨らみに触れて。
強く、強く、そこを吸い上げられた。
「・・・んっ・・・」
ちょっとしたもどかしさと痛みに顔が歪み、彼の服をキュッと掴んだ。
以前よりも強く、長くされて。
「・・・これで暫くは消えないかと」
そう言って離された唇の下からは、以前よりも濃く付けられた跡があって。
どこかそれに安心感を覚えた。
これがあるだけで、彼が傍にいるようで。
まだ傍にいても良いと思えるようで。
「・・・ありがとう、ございます」
跡を付けてもらったお礼なんておかしいかもしれないけれど。彼から貰ったものに変わりはないから。
「今日は、一緒に居てくれるんですよね」
透さんが改まったようにそう尋ねてきて。
どうして今更そんなことを聞くんだろう。
そう疑問に思いながらも、一度沖矢さんに連絡は入れないといけないと思って。
「お、沖矢さんに・・・連絡だけしても、良いですか」
恐る恐る様子を伺いながら尋ねてみて。
彼の名前を出さずして、彼に連絡を取る事は危険行為に思えたから。
どうせ嫌な思いをするなら・・・身構えた状態の方が良い。
「ええ、どうぞ」
思いの外、すんなりとその許可は得られて。
驚きつつ戸惑いながらも、透さんから借りているスマホを取ろうと体を起こしかけた時、それは透さんの手によって阻まれた。