第33章 間違い
「・・・どうしてあの男に?」
貴方に相談できるはずもないから。
貴方がバーボンでなければ、迷わず相談していた。
「前にもお伝えした通り・・・心配をかけたくなかったので・・・」
出来ることなら私だって沖矢さんと住みたくはない。今すぐにだって帰りたい。
「まだ彼の所にいる理由があるのですか?」
沖矢さんのことだからだろうか。
必要以上に迫ってくる気がする。
どうしてそこまで沖矢さんを嫌うんだろう。
私もあまり好きでは・・・ないけど。
「・・・実は、引越しを考えていて・・・それが決まるまで、お世話になる予定で・・・」
その引越し先は決まっても、恐らく言えないと思うが。
「では、ここに住んではいかがですか?」
耳を疑って、自然と離していた視線を再び彼に戻した。
私個人の考えで言えば、そんなこと願ったり叶ったりではあるのだけど。恐らくコナンくんが首を縦には動かさないだろう。
あの小さな探偵さんの言うことをきちんと聞いてる辺り、私は本当に情けない大人だと思う。
「・・・少し、考えても良いですか・・・?」
即答できないことが心底苦しい。
きっとここに住むことはないんだろうな、なんて思って。
「僕個人としては、今すぐにあそこを出て行ってほしいんですがね。ただ、一人で住むことも良いとは思えません」
そうだろうな、と他人事のように思っては更に俯いた。
ここであれば透さんも私を監視下に置きやすいんだろうし、都合が良いのだろうから。
「・・・私も、あそこに長くはいたくないので・・・早めに答えを出します」
できれば今すぐコナンくんに確認して答えを出したい気持ちはある。
そんなこと、出来る訳ないけど。
「今日も彼の待つ、あの家に帰るのですか」
透さんの目が、声が、怖い。
怒っているというより、本当に嫌悪感だけで話しているようで。
「・・・透さんと一緒に居たいと言えば・・・我儘ですか・・・?」
嘘ではないけれど、どこか取り繕っている感覚はあった。
透さんの傍にいたい。
でもそれは本当に私の我儘で。