第33章 間違い
「・・・あの・・・っ」
意を決して一言口から出したものの、彼の目を見ているのが辛くなって。
思わず視線を逸らした。
「・・・お、沖矢さん・・・、のこと・・・」
怒るだろうか。
いや、もう怒っているかもしれない。
隠していたことを今更謝ったってどうしようもないことは分かっているけど。
私の中で、彼への嘘を一つでも減らしておきたい。
これはただの私の我儘で。
これで彼を傷付けてしまうなら、私は彼の傍にいる資格がないということだ。
「・・・すみません、でした・・・」
沖矢さんの何についてかは言っていないけど、先に謝罪の言葉が出てきた。
きっとこれでも、彼には何の事か伝わってはいるはず。
「具体的に、謝罪の内容を教えて頂けませんか」
思わず透さんに目を向けた。
その顔からは笑顔が少し消えていて。
私の中で何かがざわめいた。
「・・・っ、沖矢さんと・・・住んでた、こと・・・」
絞り出すような弱々しい声で、真実を口にした。
嘘が一つでも無くなれば楽になれると思っていたのに。逆に苦しくなってくるのはどうしてなんだろう。
「いつから、ですか」
「ミステリートレインで、会った時・・・から・・・」
今思えば、長くあそこに居座っていることに、その時改めて気付いて。
こんなはずでは無かったのに。
「随分前から彼と一緒にいたんですね」
・・・怒っている。
声で察知できるくらい、その声色は変わっていて。
「すみません・・・」
謝るしかできなかった。
これ以上、何を言っても言い訳にしかならないように思えたから。
「どうして彼と住むことになったんですか」
貴方に命を狙われている可能性があるから。
なんてことが言える訳もなくて。
「組織のことを知ってしまったので、家に帰るのが・・・怖くなって・・・。組織のことは伏せて沖矢さんに、相談・・・しました・・・」
結局、また嘘が増えた。
沖矢さんやコナンくんが、組織について知っていることは伏せて置いた方が良い。それだけは拙い脳でも判断できたことで。
彼等に危険が及ぶのだけは、避けるべきことだから。