第4章 気持ち
「いえ!気になるというか・・・」
気になる。そう、気になっている。
「・・・単純に、お元気なのかな・・・と」
自分の気持ちを誤魔化すように言葉を濁した。
そんな私を見て、何か誤解しているのか梓さんがニヤニヤと顔を覗き込んでくる。
「ここでも変わらず働いてますし、元気そうですよ」
そうか、梓さんは安室さんと仕事をしている訳で。そう思うとなんだか途端に梓さんが羨ましく思えた。
「それなら良かったです。会っても挨拶くらいしかいつもできないので」
本当はもっと話したい。何をという訳ではないが、もっと安室さんのことが知りたかった。
「好きなんですか?安室さんのこと」
「え・・・っ!?」
唐突過ぎる質問に驚き過ぎて、拭いていたお皿を落としそうになった。間一髪のところで受け止めたが、動揺は隠しきれなかった。
私が?
安室さんを?
まさか。
「好き・・・とかでは・・・」
ない、はず。
違う。きっと違う。
これは恋ではない。
「違うんですか?」
違う。
安室さんは兄のことを依頼した探偵であり
ポアロでの先輩であり
探偵と助手の関係で。
それ以上の何ものでもなくて。
でも安室さんのことを考えている時間が増えたのも事実で。
「安室さんといるときの如月さん、いつも真っ赤でとっても可愛いくて」
その情報は欲しくなかった。
今もきっと状況は違えど同じ色の顔をしていると思う。
「だからてっきりそうなんだと思ってました」
「ち、違います!・・・多分」
言いきれなかった。自分でも分からない。これは恋なのか、それともただ兄と姿を重ねているだけなのか。
そんな私を見て梓さんがにっこり笑いかける。
「ふふ、そんな如月さんに朗報です!」
お皿を拭いている上からを手をギュッと握られた。
年下の女の子相手に満点の笑顔も添えてあったこともあり、ドキッとしてしまった。
「明日実は急な用事が入ってしまって・・・1日安室さんとシフト変わってもらったんです!」
明日?明日は私もポアロだったはず・・・
・・・・・・ということは。
「頑張ってくださいね!」
一体どこが朗報だったのだろうか。色んな思考が交差して小さな脳みそでは処理しきれない。暫くの間フリーズしてしまった。