第4章 気持ち
薄暗かった外はあっという間に闇を深くする。街灯があるものの、私の住んでいる場所は比較的静かな地域。夜は人通りも少ない。そこが気に入っている理由でもあるのだけれど。
「着きましたよ」
数十分のドライブはあっという間で。見覚えのある景色に安心しながら外へ出る。
「いつもすみません、ありがとうございます」
「どういたしまして。またお仕事の日程メールしますね」
そう言って夜の街へ消えていった。
家へ戻りいつもの挨拶。そしてベッドへ倒れ込む。
足が棒のようとはこのことか。久しぶりに歩き回ってパンパンだ。
身体を温めるために早速入浴を済ませた。お風呂から上がりスマホを確認すると安室さんからのメール。
これからの日程がポアロのシフトと共に細かく指定が入っている。
「明日は午前が事務所、午後からポアロか・・・」
不思議と大変だとは思わなかった。どちらも全く違った仕事でそれぞれの気分転換になる。
そして何より・・・
「・・・安室さん」
彼の存在が大きかった。
まだたった数日間の間柄なのに。
なぜか気になってしまう。
優しさに溺れてしまう。
言葉に安心してしまう。
兄と似ているのだろうか。
・・・いや、兄も優しかったが何か違う。
でも重なる部分もある。
答えの出ない考えを続けているとパンクしそうだ。
私は考えるのを諦めて食事をとり、その日の夜をゆっくり過ごした。
次の日、その次の日と、日が経つに連れて仕事内容も理解し、段々と慣れてきて。
あっという間にひと月が過ぎていた。
ペット探しの依頼は慣れたこともあり、ある程度は1人で任せてもらえるようになった。
ポアロでも料理を少しずつ教わり、少し上達したように思う。
最初のペット探し以来、安室さんとは数えるくらいしか会っていない。
特別な指示があるときはメールで指示があり、ポアロでは前提があったように梓さんとの仕事ばかりだった。
もちろん梓さんとの仕事は楽しかったので文句はないが、安室さんと会えないのはなぜか寂しさを感じた。
「安室さん、何してるんでしょうね・・・」
「気になるんですか?」
つい口に出てしまった。
この日はポアロで梓さんと仕事だったのだが、暇だったこともあり変なことを考えてしまっていた。
口から出てしまった言葉を聞いてなぜか梓さんがニヤついている。