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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第33章 間違い




暫く、天井を見上げたままボーッとしてみて。

最近こういう時間が少なかったのかもしれない。何も考えない、この時間が。

でも今はいつまでもこうしている訳にもいかない。
そう思って、ゆっくりと鍵を開けて扉を開いた。

少し開けた隙間から顔を覗かせて、部屋の様子を伺って。
どこからともなく良い香りが漂って来る。

透さんの淹れる、コーヒーの香りだ。

「飲まれますか?」
「・・・はい」

吸い寄せられるように、彼の傍に近寄って。私に気付いた透さんは、何事も無かったように変わらない笑顔と優しい口調で私に問いかけた。

小さく頷きながら返事をして、コーヒーを淹れる彼の姿を隣に並んで見守った。

ふと、コーヒーに向けていた視線を、小さく透さんに向けてみる。

変わらない整った顔立ちに、伸びている背筋。
捲られている袖から少し見える腕が、男らしさを感じさせて。

勝手に彼を見て鼓動を早めた。

不安になっても、怪しく思えても、結局彼が好きなことには変わりはないんだと実感して。
ゆっくりとコーヒーに視線を戻した。

「そろそろ終わりますから、座っていて大丈夫ですよ」
「・・・ありがとうございます」

そう一言置いてソファーに向かおうとしたけど。
足はほんの一歩しか動かなくて。

「ひなたさん?」

突然止まった私を不思議に思ったのか、彼が優しく私の名前を呼んだ。

何故だか急に罪悪感が押し寄せて。
彼の優しさが・・・痛く感じた。

「・・・っ」

どうしてこんな関係になってしまったんだろう。

こんな嘘だらけの関係に。

いつも思う答えのない自問自答が頭を巡って。

どこから間違っていたんだろう。

それが私の中での消えない最大の疑問で。

「・・・透さん」

視線は落としたまま彼の袖を掴み、近くにいることを確認するように名前を呼んだ。

「はい」

何も問わず、ただ返事だけを返してくれる。

今の私にはとてもありがたい返事で。

「・・・すみません。なんでもないです、座って待ってますね」

切り替えなきゃ。
決意を固めなきゃ。

袖を掴んでいた手を緩め、止めていた足を再びソファーへと動かした。




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