第32章 探偵と
「ただ、あの少年についてはもう少し調べてみた方が良さそうですね」
それがコナンくんのことを指していることはすぐに分かった。
私もそれは常々思っていることだ。
彼はただの小学生じゃない。
そもそも、こういうことに首を突っ込んでいる時点でおかしい。
例え工藤家の親戚で、彼等がこの件に関係があったとしても、関係のないコナンくんを巻き込むとは思えない。
考えられるのは、彼自身が組織と何かあったか・・・彼の身内が組織と絡んでいるか。
有希子さんも、息子の工藤新一がミステリートレインでの一件に関わっていると言っていたから、後者の可能性はあるが・・・。
「・・・それは、何の為ですか・・・?」
透さんがそれを知りたい理由が何なのか。
勿論、バーボンとして彼を警戒しているが故に調べることは分かっているけど。
今、私の目の前にいるのは探偵としての『安室透』だ。
「FBIのあの女性と知り合いの様子でしたから。彼も赤井秀一と接点があるとは思いませんか?」
なるほど・・・よく考えれば分かりそうなことなのに、と自分の頭の硬さを実感して。
確かにコナンくんが赤井秀一について知っている可能性は大きい。仮に沖矢さんがFBIだった場合、必然的に知るようになると思うし。
「あの・・・赤井秀一は、生きているんでしょうか・・・?」
ミステリートレインでは彼が死んだことを確信していたようだったけど、再びその可能性も調べているんだろうし。
生きているのであれば、私も彼に聞いてみたいことがある。
「その可能性が高いですね。それを確信する為には最後のピースが必要ですが」
「ピース・・・?」
それが何を指すのかは分からない上、聞いても教えてはくれないだろうな、と思いながらも彼の言葉を繰り返した。
「貴女もいずれ分かりますよ」
案の定、またそうやってはぐらかされた。
「後日、もう一度僕と来てくれますか。そのピースを拾いに」
そんな誘い、断る理由は何一つ無くて。
「・・・はい」
表情は変えず、真剣な眼差しを彼の横顔に向けながらそう返事をした。
赤井秀一が生きているかどうかを明かすことは、コナンくん達にとって不都合と言えるのかは今の時点では分からないが、これも彼等に確認しても教えてはくれないだろうな、と改めて蚊帳の外感を感じた。