第32章 探偵と
髪で軽く隠していたイヤリングを指差し、もう一度その指を口元に置いた。
それを見たコナンくんはポケットからスマホを取り出し、何かを打ち始めて。
『安室さん?』
彼が見せた画面には、そう打たれていて。
どうやら聞かれているということを伝えることはできたようだ。
彼の行動に対しては小さく頷いてみせた。
コナンくんは再度何かを打ち始め、終わるとまたそれを私に向けた。
『昴さんには言ってるの?』
相変わらず心配性だなあ、と思うと同時にこんな小さな子に心配ばかりかける私ってどこまで頼りないんだろうと情けなくなって。
彼のスマホを優しく奪い取り、それに返事を打ち返した。
『大丈夫、言ってあるよ。』
必要以上のことは今は言わない。
お互いに不都合があっては困るから。
コナンくんのスマホを彼に返すと、これ以上ここにいる意味はないと思い、彼に黙ったまま手を振ってその場で別れた。
「では、何かあったらまた連絡させて頂きます」
「え?・・・ええ、頼むわね」
去り際にジョディさんに軽く挨拶を交わし、静かにその場を去った。
『終わりました。』
並木道を進みながら、透さんにそうメールを打って。恐らく彼も終わったことには気付いてはいるだろうけど、そういう指示だったから。
『ありがとうございます。もう少し先の角を左に曲がってください。そこに車をつけています。』
彼からの返信はそうすぐに返ってきて。
言われた通り、角を左に曲がる。すぐそこには言葉通り透さんの車が止まっていた。
ドアを開け、助手席に乗り込んですぐにシートベルトをつけた。
「お疲れ様です」
そう一言声を掛けてから、透さんは車を走らせた。
「・・・これで大丈夫でしたか?」
「ええ、バッチリですよ」
満足そうな透さんの顔が、この作戦の成功を物語っていた。どうやら本当に上手くいったみたいだ。
ただ、私にはまだ作戦の意図が分からなくて。
「意外な裏話も聞けましたしね」
意外な・・・裏話。
透さんから聞いていた言葉以外でジョディさんが口にした事と言えば、缶コーヒーの事くらいだけど・・・それがそうなのだろうか。
だとしても、私にはそんなに意外性のある情報には思えなかったけど。