第32章 探偵と
「まあ、いいわ。とにかく、また見掛けたらここに連絡して」
「あ・・・はい・・・」
手渡されたのは一枚の名刺。
そこにはFBI捜査官の文字と彼女の名前、電話番号が載っていて。
「ジョディさんと仰るんですね。・・・FBI・・・ですか?」
見ず知らずの私に正体を全く隠さないことへ、少し驚いて。
FBIとはそういうものなのだろうか。
「ええ。今は訳あってこっちにいるの」
その訳を私は恐らく知っている。
けど、彼女にそれを明かすことはないだろう。
そう思いながら、名刺をまじまじと見つめ直して。
ここまでで作戦は一通り終わった。
想像していた以上に上手くいったことへ、驚きは隠せなかった。
それに彼女の連絡先まで入手したのだから、今後FBIの懐に潜り込むことだって出来そうだ。
・・・私には難しいかもしれないけど。
「では、私は・・・・・・」
「あれ、如月さん?」
作戦を終え足早にその場を立ち去ろうとした時、突然聞き覚えのある声で名前を呼ばた。
その方向に目を向けると、こちらへ走ってくるコナンくんがいて。
「どうしたの?こんなところで」
「あ、うん。ちょっとね」
まさかここで彼に会うとは思っていなかった。
彼に会うことはまずくないが、これ以上会話をするのは危険かもしれない。
今はつけているイヤリングのせいで、透さんに会話は筒抜けなのだから。
「コナンくん、知り合いなの?」
ジョディさんがコナンくんへそう問いかけて。
どうやら二人は既に知り合いのようだ。
ということは、コナンくんがここに来たのは彼女と待ち合わせしていたということ・・・?
「丁度良かった、この人は・・・」
「あっ、コナンくん・・・!足元・・・!」
そう言って彼の足元を指差し、彼が言葉を止めたところで彼ごとジョディさんから距離を離した。
「ど・・・」
「・・・しっ・・・」
どうしたの、と言いたかったんだろうけど、私が自分の口元に指を置き黙ってと指示をすれば、真剣な顔でその口を閉ざしてくれた。
相変わらず物分かりが良くて逆に怖くなる。