第4章 気持ち
「今日はこちらの方からペット探しの依頼がきています」
ペット探し、よく聞くが本当に探偵が請け負っているなんて。今はその道のプロもいるだろうに。
私も連れてこられたということはつまり。
「私もそのペット探しを・・・?」
「そういうことです」
確かにこれについては人手があった方が良いだろうと思う。だが、私のような素人に務まるだろうか。
「ペット探しの依頼はよく来ますので、如月さんにもコツを掴んでいただこうかと」
笑顔で渡されたのは周辺の物だと思われる地図と数枚の猫の写真。どこにでもいそうな三毛猫で、正直野良猫と区別がつくか不安だった。
「もし必要であればこちらも使ってください」
後ろの座席を指さされ、追うように目線を向けると捕獲器と思われるものと数種類の猫用のご飯。
かなり本格的な捜索になりそうだ。
「今日はとりあえず周辺の確認をしますので、僕と一緒に着いてきてください」
どうやら目の前の家が依頼主のものらしい。事前に話は進めてあったようだ。
車を降りると、安室さんはキョロキョロと辺りを見回し、何かを確認するとその方向へ歩いていった。
地図を確認しながら、ひたすらついて行く。その間も安室さんは辺りを見回し続けた。
「まずは野良猫の有無を確認します。他の猫の縄張りの可能性もありますからね。そこから猫の通り道などを推理していきます」
なるほど、少し探偵っぽい。安室さんの言葉を必死にメモに残した。猫がいれば地図に印を付けることを繰り返し、結局その日は夕方暗くなる直前まで辺りを歩き続けた。
「大丈夫ですか?」
車に戻り一息つく。正直なところ大丈夫ではないが。
「だ、大丈夫です・・・」
心配や迷惑をかけないためにはこの答えしかなくて。ここ暫くの運動不足が祟ったのだ。少し体力をつけた方が良いな、と心の底で決意した。
「今日はここまでにしましょう。家まで送ります」
本当は助手の私が運転しなくてはいけないのでは、と思ったが残念ながらペーパードライバーなのである。それを言い訳にするつもりはなかったが、「運転しましょうか」と聞いてしまったら色々後悔しそうで聞けなかった。