第32章 探偵と
彼に言われた通り、打ち合わせ用のソファーへゆっくりと腰を下ろして。
既に準備をしていたのか、コーヒーカップを手に透さんがこちらへ向かってきて、一つを私の目の前に置くと向かい側のソファーへ腰掛けた。
「早速ですが、本題に入らせて頂きます」
沖矢さんのことについて何か言われると思っていたが、そのことについては一切口にしなくて。
だったら私から話す必要はないと、一旦それについては蓋をした。
「これから、とある女性に会って頂きます」
透さんの言葉を聞き逃さまいと、必死に耳を傾けた。
「そこで彼女と話して頂きたいことがあります」
そういうと、透さんは一枚の写真を机の上に置いて。
それを手に取り、写っている女性をまじまじと見つめた。
金髪で、メガネをかけた外国人・・・。あまり英語は得意ではないが、日本語は喋れるのだろうか。
「この方は・・・?」
写真を手にしたまま、彼女の正体を尋ねた。
「彼女もFBIの人間です。赤井秀一と一緒に行動していた女性ですよ」
なんだか透さんの雰囲気が変わったように感じた。
どこか嫌悪感を含んだような言い方に、僅かな恐怖を覚えて。それが赤井秀一へのものか、写真の女性へのものかは定かではなかったが。
「FBI・・・」
私なんかが、そういう人達と対等に話が出来るだろうか。
不安は大きくなる一方だった。
「大丈夫です。ひなたさんならできますよ」
「・・・はい」
その言葉に少なからず安心を覚えた。
それでも不安が消えた訳ではないが。
FBIということは、コナンくんや沖矢さんも知っている人なんだろうか。この行動によって、彼等を危険な目に合わせたりはしないだろうか。
そうはさせないとコナンくんには言ったけど、不安は拭い切れなくて。
「あの・・・具体的には何を・・・?」
彼女と接点が無い私が何故接触するのかは謎だったが、そこに疑問を持っている場合ではなくて。
とにかく今は透さんの言う通りに動くしかないと、改めて覚悟を決めた。
「作戦はこうです」
一度怪しい笑顔を見せてから、透さんはこれからの行動を一通り話してくれた。