第30章 壊して※
「おき、や・・・さっ、とめ・・・ぁあっ!」
静止を求めるのもままならない。
決して激しい動きではないのに、絶頂というものは確実に歩み寄っていた。
拒絶と欲求の狭間で、私の思考回路は壊れる寸前で。
「だめ、・・・沖矢さ・・・っ!!」
「イってしまいそうですか?」
全身がビクビクと痙攣するように反応し、息が上がってくる。
もうそれが近いことが分かっているが、受け入れたくない。でも体は確実に快楽を求めていて。
「あ・・・っ、だめ・・・!!」
頭が真っ白になる感覚。
透さんとなら、幸せになれる時間のはずなのに。
「い、ぁあ・・・あぁああ・・・っ!!」
複雑な気持ちを抱えたまま、絶頂に達した。
「気持ち良かったですか?」
こんな時まで沖矢さんらしい言葉で。
さっきから聞いてほしくないことばかり聞いてくる彼を、キッと睨み付けた。
「・・・ぜん、ぜん・・・っ」
隠さない皮肉を込めて言い返した。
それに対して彼はいつもの笑みを浮かべて。
「それはおかしいですね」
おかしいことなんて一つもない。私は嘘を言ったつもりはないし。
イってしまったことや、快楽があったことは間違いないが、透さんにされている時の方が幸せで気持ちいいこともまた事実だから。
「沖矢さん、じゃ・・・満足なんて・・・できません」
あの時、彼からの喧嘩のようなものを買ったことは、熱があった時ではあるがはっきり覚えている。
彼には何をされても靡かない。
その自信は今でも変わってはいない。
寧ろ、この状況下でその思いは強くなっていて。
「・・・その言葉、お忘れなきよう」
一瞬、沖矢さんの目付きが変わった。
それにゾクッとした背筋が凍るような思いを感じて。
強くなっていたあの思いが、崩れてしまいそうになるくらいには動揺を感じていた。
「・・・っ!?」
私の意識が彼との会話に逸れている間に、蜜口に何かが当てられていて。
それが彼のモノだと分かるのにそう時間はかからなくて。
「いや・・・、だめ・・・!」
靡かない自信はある。
それでも、そこだけは超えて欲しくない一線だった。