第30章 壊して※
「やだ・・・、沖矢さん・・・っ」
首を振って拒絶を示すが、彼には逆効果だったようで笑みの無かった顔にそれが添えられた。
「そういう表情もたまりません」
膨らみに当てられていた沖矢さんの手が下着を払い除け、指が蕾を刺激する。
「ん・・・、んん・・・っ」
咄嗟に口を手で塞ぎ、声を押し殺した。
あの時、透さんの家に行く前に声は少し聞かれてしまったけど。だからといって今また聞かれても良いとは思わなくて。
「我慢できると・・・良いですね」
いつもの、余裕そうな笑顔。
それを睨みつけると、お仕置きと言わんばかりに蕾を摘み上げられた。
「・・・っんん・・・!」
手の下では歯を食いしばり、口を固く閉じて。
本当は反応だって示したくないのに。
残念ながらそれは自分でもどうしようもなくて。
「・・・っ!」
刺激を受ける最中、急に服を捲り上げられてそれらを晒される。
突然過ぎて、体も脳も追いついていなくて。
「良いものを付けられていますね」
膨らみの上辺りを沖矢さんの指でなぞられる。
一瞬、何の事だか理解し損ねたが、以前透さんに付けられたキスマークのことだと気が付いて。
「消えかかってますので、つけ直しておきましょうか」
「やめ・・・っ」
無意味と分かっていても、首を横に振って彼の肩を目いっぱい押した。
それは透さんから貰った大事なものだから。
彼からの・・・印だから。
沖矢さんなんかで上書きされたくない。
「付けたら・・・許しません・・・っ」
精一杯彼を睨み付けた。これだけは絶対に汚されたくなくて。
「・・・仕方ありませんね」
そう言いながら、優しく跡がついているであろうその場所を撫でられて。
まるで愛おしいものでも触るように。
不思議とその行動は嫌だと思わなくて。
自分でもよく分からない、不思議な気持ちになった。
沖矢さんだけど・・・感じる手つきは沖矢さんじゃない。
・・・まるで
「透・・・さん・・・」
彼のようだ、といつの間にか姿を重ねていて。
最低なのは分かっている。きっと、そうであってほしいという自分の願望が、そうさせたのだと思う。