第29章 尋ね人
「・・・っ、沖矢さん・・・?」
ソファーに倒れた体を起こそうと後ろに肘をついた瞬間、沖矢さんがすかさず覆いかぶさってきて。
やっぱり、何か違う。
無理矢理キスをされたりはしたけど、彼はこんな乱暴な扱いはしない人だ。
一つ可能性があるとすれば、目の前の彼が沖矢昴としての本性、だということ。・・・でもその可能性は、根拠は何も無かったが限りなくゼロに近いと思っていて。
とにかくこの状況をどうにかしたいが、何をどうしたら良いのか分からない。状況を把握するだけでも精一杯なのに、それ以上のことを脳が処理仕切れなかった。
「貴女を、頂いても良いですか」
「・・・!」
沖矢さんが・・・確認・・・?
いつも私に何かするときは勝手にするくせに。
「・・・どうして聞くんですか」
「おや、聞かずに頂いてよろしいのですか」
そういう訳じゃなくて。
でもなんて言えば良いのかも分からない。
ただただ、目の前の彼に恐怖が募って。
「とにかく退けてください」
「ええ、貴女を味わった後に」
そう言いながら、彼の手が太ももに這わされて。
指先で何度も優しく撫でられて。
「・・・っ、沖矢さ・・・!」
もどかしいソレが私の中の貪欲な心を刺激する。
本当は嫌なのに。彼に触れられることも、反応してしまうことも。
嫌、なのに。
「やめて・・・!」
突き放そうと何度も彼の体を押すが、毎度の事ながら上手くはいかない。
「そんな顔で言われても、そそられるだけですよ」
顔をグッと耳元に近付けられながらそう囁かれ、耳にかかる吐息に体がピクっと小さく反応を示す。
彼が言葉を言い終わったと思った瞬間、耳をゆっくりと下から舐め上げられて。
「ひ、ぁ・・・っ!」
その快楽が求めてしまいたい欲を逆撫でする。
拒みたい気持ちはあるのに。彼じゃないと・・・透さんじゃないと嫌だという思いはあるのに。
裏切りの部分が出てしまう今の自分に反吐が出る。
「沖矢さん・・・っ、いい加減に、して・・・」
自分の気持ちを正す為にも、壊れない為にも、今彼の手で溺れてしまう訳にはいかない、のに。