第28章 厄介物
「貴女が使われているベッドのシーツを取り替える為です。それと、貴女も着替えた方がよろしいかと思いまして」
室内に入り、そう言われながら降ろされたのはいつも沖矢さんが座っているであろう一人がけのソファーで。
彼は心の中の私と会話でもできるのか。彼に限らず、透さんのような探偵にはそういう機能が備わっているんだろうか。
それとも、ただただ私が分かりやすいだけなのか。
「体を拭きますので、脱がせますよ」
言いながら伸ばされた腕に反射的にビクついた。
そんなこと、色んな意味で沖矢さんにさせられる訳が無い。
「やめてください・・・っ」
「そのままでは悪化します」
「自分でしますから・・・!」
「とてもできるようには見えません」
一々言葉を発するのにも体力が必要なのに、何かを言えば何かを返され、結果こちらが折られる形になってしまった。
「見られるのがそんなに恥ずかしいようでしたら、これでいかがですか」
沖矢さんは徐ろにメガネを外し、その目をタオルで覆い隠した。
逆に、それできちんと体が拭けるのか。
そう反論したかったが、これ以上は声も力も出そうにない。もう何だって良い。今すぐにでもベッドに横になれるなら。
「・・・勝手にしてください」
「では、失礼します」
何だか少しデジャヴだ。台詞といい、状況といい、私の立ち位置は違えど、昨日の出来事と所々リンクするところがあって。
大きく違うのは、目の前の彼が沖矢昴だと言うこと。
こんなこと、透さんにバレたらどうなるんだろう。何とも思わなければ、それはそれで少し悲しいけど。
あっという間に着ていた服は器用に取り払われ、下着姿にされてしまった。探偵っていうのはみんなこういうことも手慣れているんだろうか。
情報を集める為には何でもする、とか。
有り得なくは無さそうだけど・・・と考える間に、更に頭痛と目眩が酷くなってきて。