第27章 帰り道
明日から、沖矢さんとも透さんとも、どんな顔をして会えば良いのだろう。
とにかくこの工藤邸から早く出て行きたい。
もういっそ、透さんや組織の人間の監視下でも良いから家に帰りたい。
・・・いや、それはコナンくんに危険が及ぶかもしれないからダメ、か。
何を考えても上手くいかない。
元々は、兄の死の真相を知りたかっただけなのに。
・・・彼さえ、生きていてくれれば。
その場合、透さんとは出会っていなかったかもしれないけど。
今となってはやっぱり出会わない方が良かったのかもしれない。
そう思いながら、カバンの中身を取り出して整理して。
「・・・あっ・・・」
そこでようやく気付いた、透さんのスマホ。帰ったことは一応彼に報告をしておかないといけないと思い、急いで電源ボタンを押す。
でも、画面は真っ暗なままで。
「そうだ・・・電池切れてたんだ・・・」
公園に寄り道をしたり、沖矢さんと話をしていたせいで、既に到着予定時刻を大幅に過ぎている。
そのことは透さんは知らないだろうけど、あまり遅くなってはまた彼に心配をかけてしまう。
・・・それだけで済めば良いけど。
急いで充電器をスマホに差し込み、ベッドに腰掛けて最低限の充電ができるまで待った。
電源が入るのを確認し、メールを打とうとした瞬間、電源が切れていた時に入っていたメールや着信が一斉に届いた。
勿論、全て透さんの名前で。
『今どこにいますか』
『連絡をください』
そういった類のメールが数件。着信も、数分おきに同じくらいの件数が入っていた。
工藤邸から透さんの事務所までは約三十分。透さんからの電話を切って、大体それくらい経ってから連絡が入り始めていた。
でも、透さんには私がどこから出発するなんて伝えていない。
そもそも、何分かかるかなんて伝えてもいない。
これはたまたま、なのか。
それとも、私がここにいることが既にバレて・・・。
思いたくはないが、その可能性が段々と強くなっていて。だから頻りに沖矢さんとのことを尋ねてくるのかもしれない。
このことがバレるのは非常に不味いことというのは私でも分かる。
思わず息を飲んで冷や汗を流した。