第27章 帰り道
「・・・ありがとうございます」
素直な感情としては、申し訳なさが勝ってしまうような気もするが、それでもやっぱり嬉しさは隠しきれない。
「どういたしまして」
そこに透さんの笑顔なんて添えられれば、心臓が無駄に早く仕事をして。
こんなことをされれば、尚更帰りたくなくなってしまう。
それでも、また沖矢さんの声が聞こえたらと思うと、怖くて彼の傍にはいられなかった。
「・・・もう少しだけ、居ても良いですか」
「いつまででも、どうぞ」
長く居れば居るほど、離れる時が辛くなることは分かっている。それでも名残惜しいものは仕方がない。
自分の甘さを痛感しながら、袋の中から帰りに着る一着を取り出した。
夜でお風呂の後だから、湯冷めをしないよう、なるべく厚めの生地の服を選んで。残りはまたここへ来た時に、と袋を床に置いた。
「それにしたんですね」
「え?・・・はい」
彼を見ると、その視線は私の持つ服に向いていて。それを追うように、再び手に取った服に視線を戻した。
「・・・今度、二人で出掛けませんか?」
「ふ、二人で・・・ですか?」
突拍子もない誘いの言葉に、思わず透さんに視線を戻し直して。二人で、ということは・・・つまりそれは。
「デートのお誘いです」
悪戯な笑顔を見せて、その綺麗な青い瞳で見つめられる。
私が断らないことを知った上での誘いに、やっぱりズルい人だと痛い程感じて。
「・・・行きたい、です」
それは私の希望。これが安室透としての誘いなのか、バーボンとしての誘いなのかで答えは変わってくるのだろうけど、どっちでも私にとっては透さんだ。
バーボンからなら、コナンくんは首を縦には動かさないだろうな、なんて考えて。
沖矢さんなら・・・許可を出してくれそうだけど。
「では、また近い内に連絡します」
「・・・はい」
彼らに相談するのは、その時考えよう。
本当にただ出掛けるだけであれば一々相談する必要もないと思うが、私だけでは判断しかねる。
彼等を危険な目に合わせるのは本当にごめんだから。