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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第26章 心の傷※




「今日は素直なひなたさんだと思ったんですがね」

それは沖矢さんを忘れる為に・・・なんて言えるはずもない。

残念です、と呟かれながらもタオルは広げられたまま。ここはもう私が折れるしかないんだ、と渋々決意して。

「では、頭だけ・・・」

それでも十分恥ずかしさはあるけど。
普段誰かに拭いてもらうなんてことないから。

湯船から恐る恐る体を出し、タオルを広げた透さんの目の前に立って。気配や音で感じ取ったのか、お互い姿はタオル越しでしか確認できないけど、ふわりと優しくそれで包まれた。

彼に背を向けるように体を回され、結んでいた髪を解き、優しく丁寧に髪の毛の水分を拭き取られていく。

その間も心臓が休まることはなかった。

「あとは向こうで乾かしますので、服を着たらあっちに来てください」
「あ・・・ありがとうございます」

約束通り頭だけ拭いて、彼は先に風呂場を後にした。無くなった透さんの気配を確認するように振り向くが、気配通りそこに姿はなかった。

体にかけられたバスタオルで体を拭き、ゆっくりと扉を開ける。脱衣所を小さく覗いてみるが、そこにも既に彼の姿はなかった。

タオルを軽く体に巻き付けて脱衣所に足を踏み入れる。そこでようやく大事なことに気が付いた。

「着替え・・・」

ここでシャワーを浴びる予定なんてなかったから。そんなもの用意している訳もなくて。

今から洗濯しても乾くまで時間がかかる・・・そう思いながら、ふと服置き場に目をやると。

「・・・あ、れ?」

見慣れない部屋着と、新品の下着が置かれていて。

「上がられました?」
「わ・・・っ!」

突然、脱衣所を覗き込むように透さんの顔が現れた。それに肩をビクつかせながら驚き、彼に目を向けた。

「着替え、持ってきてないですよね。僕が用意したものでよろしければ、そちらをどうぞ」

これを・・・透さんが。
適当に買ったものだとしても、私に用意をしてくれたものだとしたら、それは嬉しい以外の何物でもない。

・・・でも。

「し、下着も透さんが・・・?」
「今はネットという便利なものがありますからね」

笑顔でそう言い残し、その顔は引っ込められた。
ネットだとしても、彼にこんなものまで用意させてしまったことには罪悪感や背徳感があった。



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