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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第26章 心の傷※




「・・・すみません」

今はただ謝ることしかできなかった。
その言葉以外思い付かなくて。

「謝るようなことをしたんですか?」

間違いはない。
でも首を縦にも横にも動かすことはできず、ただただ沈黙を守った。

ここまで沖矢さんに動揺を与えられるとは思いもしなかった。あの時のストーカーといい、そもそも自分はトラウマを作りやすい体質なのかもしれない。

こんなことに足を突っ込んでいる以上、一々気にしていたらキリがないというのに。

「・・・肯定と受け取って良いですか?」

黙っていれば、必然的にそう受け取られても仕方がない。でも、色んなことでいっぱいの今の脳では言い訳の言葉が何も思い付かない。

「気持ちの整理がついたら・・・話しても良いですか・・・?」

それがいつ来るのかは分からない。
もしかすると一生来ないかもしれないけど。

今を逃れるにはそれしかなくて。

「・・・待ってます」

透さんは抱きしめる腕の力を強め、優しく言い聞かせるように呟いた。

またこうして嘘が増えていく。

今はもう何が本当で何が嘘か分からなくなってきていて。

それでも彼といるこの時間が好きだから。

今は傍にいられるならそれで良い、と改めて思って。

「・・・透さん」
「はい」

それでも、いつまでもこの体勢も格好もしている訳にもいかず。段々と別の辛さが出てきて。

「そろそろ・・・上がりたい、です」

今のままではお互い辛いだけだと思ったから。

それに、帰りたくはないがそろそろ工藤邸に戻らないといけない。
別に帰る必要もないのかもしれないが、今の自分では彼の隣にいる意味がない。それどころか、お互い傷付くだけだ。

今は極力、透さんとも、難しいかもしれないが沖矢さんとも距離を置くべきだと思って。

「分かりました」

抱きしめられていた腕がゆっくり解かれ、体が離れる。タオルを纏っていない為、体は腕で隠した。

透さんが湯船から上がり、脱衣所へ向かう。程なくして、乾いたタオルをこちらに向かって広げてみせた。

「見ませんのでこちらへ」

確かに透さんの顔は広げたタオルの向こうにあって見えないけど。今訴えたいのはそこではなくて。

「じ、自分でします・・・っ」

湯船から少し体を上げてタオルを奪い取ろうとするが、そんなこと透さんが許すはずもない。



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