第25章 正しく※
「・・・ん、う・・・」
透さんからも舌は絡ませてくるけど、いつもよりは浅いキス。
私が上になっているからか、と少し物足りなさを感じながら他人事のように思って。
お互いの唾液が混ざり合う音が浴室内に響き、いつもより反響するそれは羞恥心を逆撫でした。
「は、・・・ん、ぁ・・・」
そっか、キスの時の呼吸ってこうするんだ・・・。
自分でコントロールしている浅いキスのせいか、妙に余裕があって。
・・・透さんはきっと物足りないどころではないんだろうな。
そう考えながらゆっくり唇を離して、彼の目を見た。
湯船で温まっているからか、紅潮しているようにも見える彼の頬にまた心臓が高鳴る。
好き。
素直な感情がその時溢れて。
やっぱり私は彼が好き。
誰にも代わりなんてできない。
彼の愛が偽りでも良い。
彼が組織の人間だと知った上で、それでも好きだ。
今私が優先したいことは、兄の死の真相を知ることもそうだけど。
彼を・・・透さんを組織から抜け出させたい。
彼の目を見て、改めてそう強く思った。
「のぼせちゃいました?」
彼をボーッと見つめてしまったせいか、そんなことを彼に言われて。
「いえ・・・、透さんに見惚れてました」
そう小さく笑ってみせて。
上手く・・・笑えているだろうか。
「・・・ひなたさんも言うようになりましたね」
何故か透さんは笑みを浮かべたまま、手を自分の口元にやり、私から顔を逸らした。
それを疑問に思いながらも、体温を感じるように彼の肩へ顔を埋めた。
お湯が気持ちいいのもあるが、透さんと肌を密着させていることが、何より気持ち良い上に落ち着いて。
「・・・っや・・・!?」
完全に油断していた首筋に、生暖かい感覚を感じる。透さんの舌が舐めあげたんだと思考が追いついたのはその数秒後。
体が勝手にビクビクと反応を示すことに恥ずかしさを感じて。
「と、透さん・・・っ、くすぐった・・・あっ・・・!」
逃れようにも、彼の手が背中に回っていてそれを許さなかった。首筋を舐め上げられる度にピクっと体が反応を示し、声が出てしまって。
「くすぐったい所は性感帯、とも言いますよ」
「ひ、ぁあ・・・っ!」
そう言われるや否や、彼は首元に噛み付くように吸い付いた。