第25章 正しく※
その後、透さんの背中や髪を今度は私が洗わせてもらった。彼の大きな背中や、想像以上に柔らかい髪の毛に、一々ドキドキしながら彼を文字通り肌で感じた。
「ありがとうございます、とても気持ち良かったですよ」
そう笑顔で言ってもらえば、また心が満たされるようで。
彼に感謝されることが何より嬉しい。
透さんの為に、小さなことでも出来ることがあるのであればしたい。そう改めて思った。
「冷えますから湯船へどうぞ」
そう促されるまま、湯船に足を入れた。透さんも私に続くように入ってきて。
それなりの広さはある浴槽だけど、透さんと二人で入るとやっぱりそれなりの狭さは感じる。それでも、全く身動きが取れない訳ではなくて。
お互い向かい合うように座れば、足と足は絡み合うように重なった。
「大丈夫ですか、狭くないですか?」
「私は・・・大丈夫です」
それに関しては全く平気だけれど。透さんと触れ合う部分が熱を帯びるように熱くなるようで。
心臓の鼓動も速さを増していった。
「こっちへ来ませんか?」
透さんが腕をこちらへ伸ばしてそう尋ねてくる。
それは透さんの膝に座れと言う事で。
「えっ・・・と・・・」
いきたい。
けど、恥ずかしさがそれを許さない。
もっと触れたい。
貴方をもっと感じたい。
それでも無駄な理性がそれを強く抑止する。
「・・・ひなたさん」
優しく名前を呼ばれ、心臓が高鳴る。
その数秒後には、彼に吸い寄せられるように近寄っていて。
気付いたら彼に向かい合ったまま跨る形で軽く膝に座っていた。
背中には彼の手が回っていて。
「とおる・・・さん」
いつもは彼を見上げる形だけど。
今は彼の上に乗っているからか、少しだけ見下ろすような角度で。
それが何故か妙な気持ちを掻き立てた。
お互いを確認するように、今の時間を噛み締めるように、暫くお互い見つめ合って。
「ひなたさんからしてくれませんか」
そう言って透さんは私の唇を指さした。
することは口に出さないけれど、その仕草だけで伝えるのには十分過ぎた。
いつもの私なら戸惑うんだろうな、とどこか他人事のように思いながら、ゆっくり目を閉じて彼に唇を重ねた。