第25章 正しく※
「すみません、無理を言いましたね。お風呂、ゆっくり入ってください」
そう言い残してその場を去ろうとする透さんの手を咄嗟に掴んだ。
やっぱり誤解されている。
そうじゃないのに。貴方を心から感じたいと思っているのに。
「・・・っ」
透さんを引き止めたまでは良いが、言葉が出てこない。素直に言えば良いんだろうが、それは羞恥心が許さなかった。
沖矢さんのことなんて口が裂けても言えないし、何を伝えれば良いのか分からなくて。
「い、一緒が・・・っ、良い・・・です」
それが今の私の精一杯だった。
行為が進んで、また沖矢さんを思い出してしまうことが怖かったが、それを忘れさせてくれるのも透さんしかいないと思って。
今の私の殆どは、彼でできていると言っても過言ではないから。
「・・・無理はしないでください」
「し、してません・・・!」
怖くて彼の顔は見れなかった。
・・・いや、これもまた罪悪感だったのかもしれない。
透さんのキスで沖矢さんを思い出してしまったことへの。
「さっきのは・・・その、びっくりして・・・」
苦しい言い訳なのは分かっていた。
彼がこの言葉を信じないことも。
それでも他に言葉が見当たらなくて。
「透さんで・・・満たしてほしいです・・・」
心も、体も。
そうして沖矢さんを忘れさせてほしい。
この苦しさを、無かったことにしてほしい。
「・・・そんな言葉、僕以外に使わないでくださいよ」
言う相手もいないし、言える訳もない。
掴んでいた手をゆっくり離され、改めて向き合う形になったことを足元を見て確認する。
「少し、腕を上げて頂けますか」
言葉の意図は分からないまま素直に指示に従うと、透さんは徐ろに私の服の裾を掴み、一気に服を脱がされた。
露わになった下着姿が恥ずかしくて、思わず腕で隠した。
「じ、自分で脱げますから・・・!」
できれば服を脱ぐまでは出ていってほしいけど、引き止めた自分がそんなことを言える訳もなくて。
「僕がそうしたいんです」
そう言いながら淡々と服を脱がされ続け、あっという間に上下、下着姿になってしまった。
これ以上は恥ずかしくて耐えられそうもない。