第25章 正しく※
「・・・っ」
再び彼を掴む手に力が入る。
裸を見られるのは初めてではないし、行為だって同じだ。それでも、彼に対する緊張や羞恥心はまだあって。
「・・・ひなたさんが本当に嫌であればやめますよ」
軽く頭を撫でられながら、優しい声でそう言われて。
何故かその言葉で罪悪感に苛まれた。
「ち、違うんです・・・っ!あの、えっと・・・き、緊張・・・して・・・」
顔を上げて言葉を出したが、優しい彼の笑顔が目に飛び込んだ瞬間、更に緊張が高まってしまって。
耐えられなくなった脳が仕事を放棄し、体の力が軽く抜け、思わず透さんの体に顔を埋めた。
「・・・すみません、酷い顔だと思うので見ないでください・・・」
きっとこの上なく情けない顔になってる。
触らなくても顔が熱いのが分かって。
丁度埋めた顔の辺りは透さんの心臓付近。目を閉じると、彼の鼓動が伝わってきた。
私とは違って大人しく、でもハッキリと大きくそれは動いていて。
「・・・そんな可愛いことをされると保てませんよ」
両手で顔を掴まれ、強制的に顔を向かい合わされた。
その瞬間に、何をされるのかは体が分かっていて。
「・・・ん、う・・・んん・・・っ」
器用に口内へ侵入してくる舌は、確実に私を快楽の沼へと引きずり込んでいく。
苦しさはあるけれど、その苦しさすらも快楽の要素になってきて。
『そんな顔をされるんですね』
「・・・っ!!」
ふと脳内で再生された、とある台詞。
その声と言葉で拒絶反応が出て、思わず透さんを突き放した。
「・・・ひなた、さん・・・?」
この息が荒いのは透さんとのキスのせいか、それとも・・・。
胸が苦しくなって、違和感を感じるそこを強く掴んだ。
どうして今、沖矢さんの声で、あの言葉が出てきたんだろう。
一番思い出したくない出来事なのに。
「大丈夫ですか・・・?」
心配そうに、様子を伺いながら透さんが近付いてきて。
目の前にいるのは透さんなのに。体や頭が勝手に沖矢さんを連想させる。
「す、すみません・・・っ」
彼を傷付けてしまったかもしれない。そう思うとどうしようもなく居た堪れない気持ちになって。