第24章 裏切り※
「・・・本当に・・・これ以上、心配ばかりかけないでください」
言うなり強く苦しいくらいに抱き締められた。
その行動に少なからず驚いて。
その言葉はとても、私を監視する為だけに出た物とは思えなくて。本当かどうかは分からないけれど、彼の本音を聞いたような感覚。
少し迷いながらも、彼の背中に腕を回して、優しく透さんを抱き締め返した。
「・・・すみません、迷惑ばかりかけてしまって・・・」
「迷惑なんて一度もかけられた覚えはありません。心配は何度もありますけど」
抱き締められたままそう続けられて。
ただ天井の一点を見つめながら彼を抱き締める手に力を込めた。
「・・・ひなたさん」
「はい・・・?」
急に体を少し離し、鼻先が触れるくらいの近い距離で名前を呼ばれる。
それに首を小さく傾げながら応えて。
「さっきの電話越しにいた男・・・沖矢という男ではありませんよね」
「・・・っ」
何を言われるのだろうとぼんやり考えた瞬間、心臓を貫かれるような事を言われてしまって。
どこで気付かれたんだろう、電話越しに男がいると。
「電話した時は、周りには誰もいませんでしたよ。・・・テレビの音ではないでしょうか?」
透さんのはったりかもしれないから。そこは嘘を貫き通して。
こうして私達の関係は嘘ばかりで固められていくことに、絶望に近い感覚を味わった。
「・・・そうですか」
透さんが悲しそうに笑う。
その笑顔に苦しくなって。
「今日、車で腕を振りほどかれた時は嫌われたのかと思いました」
「そんな・・・っ」
そんなこと、あるはずない。
あれは、貴方を避けなければならなかった罪悪感からきたものだ。
本来の私ならば軽く釣られているところだ。
「・・・手伝ってほしいことがあると言いましたよね」
そういえば車を降りる直前に、そんなことを言われた覚えがある。
「・・・はい」
「どうです、手伝ってくれますか?」
私が断れない・・・否、断らないことを知った上での質問。
ちょっと悔しさはあるけれど。
「・・・透さんの為なら」
「良いお返事が聞けて嬉しいです」
その直後、額に透さんの唇が優しく触れた。