第24章 裏切り※
「・・・楠田陸道」
一回の呼吸では、その名前を絞り出すのがやっとで。鼓動は、この上なく早くなっていた。
「彼は組織と関係あるんですか。どうして彼の写真が・・・私のデスクに・・・?」
彼に少し詰め寄るように。視線は外さず、質問の言葉を続けた。
彼は笑顔から一転し、少し驚いた様子になっていて。それが質問の内容でそうなっていないことは分かっている。
「ああ、彼の写真、ひなたさんのデスクに入っていたんですね」
また彼の顔には笑顔が戻り、それはさっきよりも不敵なものになっていた。
「言いましたよね?彼にはお金を貸していてそれを返してほしいから探しているんです。組織とは何ら関係ありませんよ」
それが嘘かどうか判断するには、能力も情報も足りなさ過ぎる。
ただ、楠田陸道という人間を、コナンくんも沖矢さんも、そしてわざわざ私に教えたであろう透さんも何故か隠そうとしていることは事実だろう。
「・・・そう、ですか」
これ以上は突っ込めなかった。それにはやはり今の私には何もかも足りなさ過ぎて。
「僕も一つ聞いても良いですか」
「?」
無意識に体が身構えた。
何を聞かれても知らないと答えるつもりだけど。
「・・・さっきまで誰と会っていたんですか?」
痛い程に心臓が大きく反応を示した。
沖矢さんといたことがバレているのだろうか。
いや、これはただのはったりかもしれない。
「友人、ですけど・・・」
「そのご友人、男性ではありませんよね?」
やっぱりバレているんじゃ。
そんな心配ばかり脳を駆け巡り、息が苦しくなる。
「心配しなくても・・・女性ですよ」
無理に笑顔を作って、嘘を吐いた。
彼の目を見るには耐えられなくなり、思わず小さく外してしまって。
「・・・っ!」
その瞬間、ソファーの上に押し倒されたことに気付くのに時間はかからなかった。
「さっきの電話、男の声がしましたよ」
「・・・!」
そんなはずはない。沖矢さんは一言も喋っていなかった。
聞こえたとするならば、私の僅かに漏れてしまったあの・・・。
「・・・っ、ぁ・・・!・・・透、さん・・・!?」
そう、小さなこの甘い声。