第24章 裏切り※
「ん・・・っ、ぁ・・・沖矢さ、ん・・・っあぁ!」
「濡れてますね」
スカートの裾から手を入れられ、下着の上から秘部を撫でられた。
触られて分かる。彼のキスや愛撫で感じてしまったことから溢れた、その液の存在を。
「・・・本気で、通報しますよ・・・っ」
強めの口調でそう言うと、また沖矢さんにクスッと笑われて。この人は怒りを逆撫でる天才だな、と思いながら睨み付けた。
「それは困りますので、ここでやめましょうか」
そう言って手や体を離し、沖矢さんはいつもの部屋へと向かって歩き出した。
「彼と良い夜を過ごしてください。ただ、飲み込まれないようにご注意を」
沖矢さんは小さくこちらを振り返って、そう言い残した。
態度にも言葉にも、多少の怒りが生まれたせいか、部屋に入っていく彼の後ろ姿をまた睨み直した。
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透さんのスマホと僅かな荷物をカバンに詰め直し、工藤邸を後にした。
辺りはすっかり暗くなっていて。
「・・・お腹空いたなあ」
夕飯はすっかり食べ損ねてしまった。
この時間だから、沖矢さんが何か準備をしていた頃だろうけど。
まさか沖矢さんがあんなことをするとは思えなくて。やはり私は注意力というか危機感というか、そういう物が無さすぎる。その自覚はあった。
・・・あの電話でのこと。透さんに、気付かれてはいないと思うけど。
彼と話している最中に、別の男に体を触られていたなんて、罪悪感以外の何物でもない。
ましてや相手は透さんが嫌っている沖矢さんだ。
これは何が何でもバレてはいけないことだ、と自分に言い聞かせながら、あの事は無かったことにしようとして。
頭を冷やす為にも事務所まではなるべくゆっくりと歩いて。冷たい空気が程よく頭も体も冷やしてくれた。
「ひなたさん!」
「透さん・・・?」
事務所まで後少しというところで、透さんがこちらに駆け寄って来て。
「ど・・・どうしたんですか・・・?」
透さんはどこか焦ったような表情で。走り回っていたのか、息は上がり切っていて。
「それはこっちの台詞です。あまりに遅いので心配しました」
もしかして・・・探してくれていたのだろうか。
そうだとしたら、この上なく嬉しく感じて。