第24章 裏切り※
「やめ、て・・・っ、沖矢さん・・・!」
全身が微弱な快楽により小刻みに震えた。
嫌なのに。
心は拒絶しているのに、体が求め始めていて。
「・・・ひぁ・・・っ!」
優しく転がされている最中、突然指で摘まれて甘い声が漏れた。
沖矢さんに聞かれてしまったことが恥ずかしくて、手の甲を口元に近付け、深く俯いた。
「そんな声で鳴くんですね」
耳元で囁かれて、ゾクッと刺激が走った。
嫌だ、やめてほしい。
どこで・・・何を間違えたの・・・?
そう脳裏で考えていると、突然上着のポケットから電話を告げる着信音がして。
「・・・っ」
それはさっき、隣で阿笠博士から受け取った透さんのスマホだということはすぐに分かった。
それが透さんからの着信だということも。
「お、沖矢さん・・・!?」
どうするか迷っていた時、沖矢さんは私の肌に這わせていた手をするりと抜き取り、今度はポケットに手を入れた。
着信を告げるそれを取り出し、画面に映った安室透の文字を見ると、不敵な笑みを浮かべて受話ボタンを押した。
「・・・!?」
すぐさまスピーカーボタンも押し、沖矢さんはそれを私に押し付けて。
どうして何も言わないの。
その疑問でいっぱいだったが、出てしまったものは仕方がない。慌てながらも、透さんのスマホを受け取った。
『もしもし』
スマホから聞こえてきたのは当然透さんの声で。
安心するような、罪悪感を感じるような、複雑な気持ちのまま震える手でスマホを握りしめた。
「も、もしもし・・・」
スピーカーにしてあるから会話は沖矢さんにも筒抜けで。
何故かそれが妙に恥ずかしく感じた。
『今、どちらにいますか?』
その質問にドキッと心臓が跳ねて。
大丈夫、このスマホには何も無かったんだから。
「・・・友人の家にいます」
なるべく落ち着いて。いつものように。
『やはり、これから会えないでしょうか』
電話越しの透さんの声が、少し威圧感を感じるような気がした。
あの時、ミステリートレインで聞いたような。
ということは、今私が話しているのは透さんではなく、バーボンかもしれない。そう薄ら思って。