第23章 不都合
「博士の発明品は夢がありますね」
私が作っているものとは少し違うけれど、いつかこんな物も作ってみたくなってしまって。
「また今度、発明のお手伝いをさせて頂けませんか?」
「ああ、いつでも来てくれて構わんよ」
その言葉に胸が踊るようだった。やっぱり私はこういう物に囲まれるのが好きだな、と改めて思って。
そんな時、ふと時計が目に入って。そろそろ辺りが暗くなってしまう時間だ。いくら隣とはいえ、沖矢さんにここへ来ていることは伝えていない。
心配はしないと思うが、少し慌ててしまって。
「あの・・・、長い間お邪魔してすみませんでした。そろそろ帰りますね」
それに対して博士は笑顔で応えてくれて。
部屋を出て玄関へ向かうと、コナンくんと哀ちゃんがカウンター席のようなところで話をしていた。
「帰るの?」
「うん、沖矢さんに伝えてないしね」
コナンくんは、わざわざ椅子から降りて私の方に近寄ってきて尋ねた。
「気を付けてね」
「ありがとう、コナンくんもね」
そう言うなり、彼に小さく手を振って足早に阿笠邸を後にした。
門を開ける前に外から工藤邸を確認すると、部屋に明かりが灯っていた。どうやら沖矢さんは帰っているらしい。
それに焦りを感じて、僅かだが玄関まで走った。扉をゆっくりと開き、中を確認する。でも、人の気配は感じられなくて。
「・・・沖矢さん?」
部屋に足を踏み入れながら彼の名前を呼んでみて。
「おかえりなさい」
「わ・・・っ!!」
全く気配のなかった廊下の方から突然沖矢さんが出てきて。思わず驚いて声が出てしまった。
「随分と遅い帰宅ですね」
「す、すみません・・・」
遅くならないように、と言われていたにも関わらず、それを破ってしまったことから感じる申し訳なさで視線を落とした。
沖矢さんが近付いてくる気配がする。
「事務所だけ、という訳では無さそうですね」
この時間まで彷徨いていればそう考えるのは当然のことで。
どうせコナンくんには伝えてしまっているし、この人にははぐらかされるんだし。だったら真っ向から伝えてみても良いかと思って。
「楠田陸道のことを調べていました」
それを聞いた沖矢さんの雰囲気が、一瞬ピリついたように感じたのは、きっと気の所為ではなかったと思う。